2007年9月13日木曜日

最近の景気動向・・・ギャンブル禁止令の影響は?

7月下旬にリンデンラボ社が実施したギャンブル禁止令が、セカンドライフの経済にどのくらいの影響を及ぼしたのかを見るために、グラフを作成してみました。(6月18日-9月11日)

使用したデータは、Second Life Insiderで毎日発表されている、「インワールドにおける過去24時間の取引額」(米国ドル換算額)および「同時接続人数の1日における中央値」です。(データが取得できなかった日のグラフは空白になっています。)


ギャンブル禁止令が実施されたのは7月25日。グラフからわかるように、7月29日以降、取引額は減少しており、現在までその傾向が続いています。

同時接続人数のグラフが落ち込んでいる日がところどころにありますが、これは、メンテナンス日、または、システムに深刻なトラブルが発生した日です。

取引高の減少の要因としては、サマーリセッション(注)も考えられますが、バカンス時期の同時接続人数が減少していないことから、7月29日以降の取引高の減少はギャンブル禁止令の影響によるところが大きいものと思われます。

(注:夏はバカンスに出かける人が多く、そのためセカンドライフへの接続が減り、それによって景気後退が起こること)

そしてその影響の大きさですが、実質的な大きさは、グラフから読み取れる取引額の減少分よりもかなり小さいのではないかと思います。

グラフに使用した「インワールドにおける過去24時間の取引額」のデータは、もともとはリンデンラボ社から提供されているものですが、この金額はモノ・サービスの売買などの商取引のみを表しているわけではなく、アバター間のお金のやり取りを単純に、自動的に集計したもののようです。(ソース:SECOND LIFE HERALD "$1.6 Million US Dollars Spent," and It's Fake (ok, what else is being faked?) ")

ギャンブルというのは、勝ったり負けたりと、お金のやり取りが何回も発生するものです。ですから、取引額を膨らませる要因になります。すなわち、プレイヤー同士、またはプレイヤーと胴元とのお金のやり取りはすべて取引額としてカウントされてしまいますが、胴元の売上げとなるのはその一部分であり、ギャンブルでのお金のやり取りの合計と比較すると、かなり小さなものとなります。

したがって、グラフで見ると、ギャンブル禁止令後の取引額は約4割も落ち込んでいますが、ギャンブル禁止令がセカンドライフの経済に与えた実質的な影響は、もう少し小さくなるはずです。

なお、7月28日は、インワールドの取引額が突出していますが(443万3,000米国ドル)、この日のデータが本当に正確なものなのかどうか疑問です。

前日の7月27日には、Ginkoの取付け騒ぎが起こっています。その結果Ginkoは、資金不足に陥り、引き出し限度額を大幅に下げたわけですが、その当時の預金残高は、約1億9,200万リンデンドル、米国ドルに換算して約71万米国ドルです。

ユーザがGinkoから預金を引き出した分も、インワールド内の取引額としてカウントされます。しかし、7月28日の取引額は、Ginkoの預金残高をはるかに上回るものであり、取付け騒ぎ時のお金のやり取りを反映しているとは思えません。7月28日のデータはSecond Life Insiderの記事の誤植のような気がします。

2007年9月8日土曜日

メインランドのオークション

★落札価格の推移(シム単位またはそれに準じた広さのもの)

リンデンラボ社がメインランドで新規に造成した土地は、オークションで米国ドル建てで売却されます(1シムに相当する広さ6万5,536平方メートルのもの、またはそれに準じるもの)。

9月5日までに終了した米国ドル建てオークションのうち、シムまたはそれに準じた広さのもの(55,000 平方メートル以上)の落札価格の推移を表わしたものが次のグラフです。赤のラインがその月の落札価格の幅、青のラインが平均落札価格を示しています。

ソース:Second Life Auction Statistics

月ごとのオークション個数は次のようになっています。

ソース:Second Life Auction Statistics 

平均落札価格は、6月には少々上昇しましたが、それ以降、再び、下降しています。特に、8月には351個もの大量のシムがオークションに出され、それに呼応して、平均落札価格も大幅に低下しました。

9月に入ってからも落札価格は下がり続けています。フルの広さをもつシム(6万5,536平方メートル)の物件で、落札価格が1,400米国ドルを切るものも出てきました。


★リンデンラボ社の土地価格政策

8月1日付のロイターの記事の中で、オークション担当のJack Lindenは次のように述べています。

“Mainland price has been on a fairly controlled and gradual downward trend since early this year, when it was arguably too high at L$12 per meter. We’re now at a healthier L$8 - L$9 per meter,” he said. “We’re pretty careful about how we manage land supply,” Jack Linden said. “Clearly a lower L$ per meter level helps new premium members step onto the land ownership ladder.”

(メインランドの地価は、かなり統制されており、今年の初めから穏やかな下降基調にある。今年初めの土地の単価は、L$12/sqmで、これは高すぎた。現在は、より適正な価格であるL$8 - L$9/sqmになっている。リンデンラボ社は、土地の供給量の調節について、かなり注意を払っている。土地単価が下落すれば、新規プレミアム会員が土地を購入するようになることは明らかだ。)

リンデンラボ社は、8月に入ってから大量の土地をオークションに出し始めました。8月1日から15日までにクローズした物件は206シム。7月は月間で147シムでしたので、8月前半だけで、7月の数字を上回っています。

このような状況を受けて、小売りの地価も急激に下がりました。

小売り物件の最低単価(512平方メートル以上の広さの土地)

7月18日 L$9.6/sqm
7月25日 L$9.6/sqm
8月1日 L$9.1/sqm
8月8日 L$7.8/sqm
8月15日 L$6.1/sqm

8月14日には公式ブログで、リンデンラボ社は次のような発表を行いました。

・コミュニティにより有益な情報を提供するため、今後はオークションに出すシムの1日当たりの個数を事前に予告する。
・8月15日から月末までは、平均して1日当たり10個のシムをオークションに出すものとする。

8月29日には公式ブログで、再び、供給数の予告を行いました。9月1日から14日までにオークションに出されるシムの数は1日当たり最高で8個とのことです。

なお、リンデンラボ社がターゲットとしている小売りの土地単価はL$6/sqmとのこと。これは、リンデンラボ社のスタッフが住民向けに開いているミーティングの席上で明らかにされたものです。(ソース:Nock Foragerさんのブログ

ところで、リンデンラボ社は7月31日にオークションの最低入札価格の変更を行いました。それまでは1,000米国ドルだったものを、1,250米国ドルに変更しました。

その当時、シムの落札価格は2,000米国ドルを上回っていましたので、なぜ、このような変更を行うのか、非常に不思議に思いました。しかし、その後の落札価格の推移をみると、大幅下落を見越しての変更だったことがわかります。

小売り物件のここ数日の最低単価は、L$5.9/sqmです。リンデンラボ社の土地の価格調節はうまく行っていると言えるでしょう。

2007年9月2日日曜日

リンデンラボ社発表の7月のKey Metricsより

セカンドライフの公式ブログで、7月のKey Metricsが発表されましたので、その中からいくつかの項目をピックアップしてご紹介します。

★住民数、ユーザー数、プレミアム会員数の推移


7月末の住民数は854万8,178人でした。住民数というのは個々のアバターの数です。一人のユーザーが複数のアバターを持つ場合あります。

7月末のユーザー数は570万6,958人、 プレミアム会員数は8万8,797人でした。プレミアム会員数だけの推移を表わしたグラフは次のとおりです。

対前月比の伸び率は、住民数が+10.6%、ユーザー数が+9.2%、プレミアム会員数が-6.1%でした。対前月比の伸び率を先月と比較すると、いずれも低下しています。

プレミアム会員数の減少の理由については、リンデンラボ社のKey Metrics担当のMeta Lindenが、ロイターの記事で次のようにコメントしています。

“The most significant reason for the drop in premium numbers was the enactment of a program to put accounts on hold that were in arrears with us,”

(プレミアム会員数の減少の最大の理由は、支払いが滞っているアカウントを停止処分にするという処理方法を開始したからだ。)

また、プレミアム会員数の減少とギャンブル禁止措置との間には相関関係が見られないとも述べています。

ちなみに、ギャンブル禁止措置が実施されたのは7月25日でした。


★性別比(アカウント登録時に申告した性別)

アカウント数による男女比の推移は次のとおりです。

7月は男性が75.67%、女性が24.33%でした。

利用時間による男女比の推移は次のとおりです。

7月の男女比は男性が57.87%、女性が42.13%でした。

Key Metricsでは、実数も提供されてますので、それぞれ男女別に時間数の合計を人数の合計で割って、平均利用時間を出してみると、男性が17.41時間であるのに対し、女性は39.42時間となりました。


★アクティブ・レジデンンツの国別および全体

国別のアクティブ・レジデンツ(過去1ヶ月間のログイン時間が1時間を超える住民)の上位10カ国は次のとおりです。

日本のアクティブ・レジデンツの数は4万4,847人。人数、利用時間とともに第3位で、先月の第6位からそれぞれ順位を上げています。

ちなみに、日本語版がリリースされたのは7月13日でした。

日本人の平均利用時間は、34.87時間でした。 

アクティブ・レジデンツ全体の合計は、人数が56万1,485人、利用時間数が2,347万3,975時間でした。対前月比では、人数が13.4%増加、利用時間数が24.1%増加となっています。


★アクティブ・レジデンツの年齢層別割合

            アバター数   利用時間

13-17(teen grid)     0.86 %      0.73 %
18-24          26.74      17.32
25-34          37.52      36.16
35-44           21.92      27.05
45以上          12.44      18.14
不明            0.52       0.60

利用時間で見ると、35歳以上が全体の45.19%を占めています。


★マネーサプライ

7月末のマネーサプライは、32億6,236万7,543リンデンドル、日本円に換算して 約14億1,000万円でした。(1米国ドル=268.8369リンデンドル=116.23円)


対前月比の増加率は8.0%でした。対前月比の増加率は、12月をピークに低下傾向が続いていましたが、先月の対前月比増加率が6.7%でしたので、今月は上昇しました。



★リンデンドルの為替市場(LindeX)  

リンデンドルの為替市場(LindeX)の取引高の推移は次のとおりです。

7月のリンデンドルの為替取引高は19億5,425万6,648リンデンドル、日本円にして約8億4,500万円。対前月比で7.1%の増加となりました。

リンデンラボ社の新規発行売却高は1億5,907万4,702リンデンドル(約6,900万円)。対前月比で1.7%の減少となりました。

なお、リンデンドルから他通貨への両替を扱っているのはLindeXだけではありません。主なところでは、ショッピングサイトであるSL Exchangeや、銀行サービスを提供しているapezなど。そのようなところの取扱高は不明ですので、為替市場全体の規模を把握するのは、現在のところ不可能です。



★経済安定のしくみ

リンデンドルの為替レートは、ここ1年ぐらいは1米国ドル=270リンデンドル前後で推移し、非常に安定していると言えます。

リンデンラボ社は公式ブログで、The Second Life Economyというエントリを掲載し、リンデンドルの価値の下落とハイパーインフレを防ぐ方法、すなわち、マネーサプライを適正水準に保つための手段について説明しています。

それによれば、これまでは、セカンドライフの規模の拡大に応じて通貨量を増やしてきましたが、将来、人口の伸びが安定化したときには、通貨量を減少させるための手段を多用するかもしれないとのこと。

また、そのひとつの手段として、現在、米国ドル建てで徴収している土地の売却代金と土地使用料を、1ヶ月間だけリンデンドル建てで徴収すれば、リンデンドルのマネーサプライを一気に半分以下に減少させることができるとのことでした。

しかし、土地ビジネスはリンデンラボ社にとって、主要な収入源です。上述の手段をとる前に、スティペンドの減額、アップロード代の値上げ、あるいはインワールドでの独自アイテムの販売など、米国ドル建ての収入を減らさずにリンデンドルの流通量を減らす手段を、まずはとってくるのではないでしょうか。


★土地

7月末の土地の合計面積は、779.95平方キロメートル。うち、メインランドが178.76平方キロメートル、プライベートアイランドは601.19平方キロメートルでした。


対前月比の増加率は、全体では9.5%の伸び。メインイランドの増加率が7.3%、プライベートアイランドの増加率が10.1%でした。プライベートアイランドの対前月比の増加率は、前月より1ポイント低下していますが、メインランドの増加率は3.2ポイント上昇しました。


★新しい指標・・・システムのパフォーマンス

リンデンラボ社は、今回から、システムのパフォーマンスを表す8つの指標を新たに公開しました。

これは、以前のエントリでも触れましたが、リンデンラボ社の姿勢が、セカンドライフの拡大よりも、システム安定性重視の方向に変わってきたことの表れだと思います。最近の公式ブログでは、システムのトラブルがあった際に、どんなトラブルであったのかを詳しく説明するようになりました。

しかし、「システムの安定性の向上に努めています」といくら言葉で主張しても、もしもユーザが、ログイン中にクラッシュを1度でも経験したならば、その言葉を信じるのはたぶん難しいでしょう。

ですから、具体的な数値を示すことで、リンデンラボ社の姿勢をユーザに理解してもらうつもりなのだろうと思います。

さて、その指標ですが、以下のとおりです。公表された数値は、今年の1月からの日毎の数値ですが、月の平均で見るとあまり大きな変化はありませんでしたので、7月の平均値のみを併せて記載しました。

1 異常終了したセッションの割合 22.35%

2 シムから落とされたユーザの割合 7.20%

3 ビューアがクラッシュしたことを報告したユーザの割合 7.57%


サーバサイド指標

4 % of daily usage with sim > 35 FPS 97.19%

5 % of daily usage with sim > 20 FPS 99.38%

(これらの指標の正確な意味は不明ですが、おそらく、シムのパフォーマンスが、それぞれ35FPS、20FPSを超えたシムの数の割合だと思います。daily usageが1日のある一時点で測定した値か、または1日の平均値を意味しているのかは、不明です。)

クライアントサイド指標

6 Highest Viewer FPS for lowest quartile  6.82
パフォーマンスの数値が下位25%に属するビューアの最高FPS)

7 Median Viewer FPS  12.80
(平均FPS)

8 Lowest Viewer FPS for highest quartile  21.18
(パフォーマンスの数値が上位25%に属するビューアの最低FPS)