2007年12月25日火曜日

リンデンラボ社発表の10月および11月のKey Metricsより

セカンドライフの公式ブログで、10月および11月のKey Metricsが発表されましたので、その中からいくつかの項目をピックアップしてご紹介します。なお今回は、2か月分がまとめて発表されました。


★総利用時間


10月の総利用時間は2,594万1,525時間。前月比で7.5%増加しました。

11月の総利用時間は2,462万5,902時間。前月比で5.1%減少しています。リンデンラボ社は減少の原因を、予定外のサービス停止によるものとしています。


★住民数、プレミアム会員数の推移


10月末の住民数は1,057万615人、11月末は1,117万5,710人でした。住民数というのは個々のアバターの数です。一人のユーザーが複数のアバターを持つ場合もあります。

対前月比では、10月が10.1%増加、11月が5.7%増加しています。

10月末のプレミアム会員数は9万1,613人、11月末は9万2,595人でした。

対前月比では、10月が0.6%増加、11月が1.1%増加しています。プレミアム会員数だけの推移を表わしたグラフは次のとおりです。
なお、9月まではユーザー数(Unique residents)が公表されていましたが、10月からは公表されていません。


★性別比(アカウント登録時に申告した性別)

アカウント数による男女比の推移は次のとおりです。

10月は男性が72.25%、女性が27.75%でした。

11月は男性が71.72%、女性が28.28%でした。

利用時間数による男女比の推移は次のとおりです。

10月は男性が57.79%、女性が42.21%でした。

11月は男性が58.37%、女性が41.63%でした。

時間数と人数については実数も公表されていますので、男女別に平均利用時間を算出してみると、11月は男性が21.3時間であるのに対し、女性は38.5時間となっています。


★アクティブ・レジデンンツ・国別 

アクティブ・レジデンツ(1ヶ月間のログイン時間が1時間を超える住民)の、人数および利用時間数による上位10カ国は次のとおりです。
10月

11月

人数についての順位では、日本は、10月、11月ともに第4位となっており、これは9月と変わりありません。

日本のアクティブ・レジデンツの人数は10月が3万4,569人、11月は3万793人でした。対前月比では、10月が3.5%減少、11月が10.9%減少しました。人数は、7月の4万4,847人を最高に、減少傾向にあります。

利用時間数については、日本は、10月、11月ともに第3位となっており、これは9月と変わりありません。

日本のアクティブ・レジデンツの利用時間数は、10月が211万7,355時間、11月が192万2,348時間でした。10月は対前月比で6.2%増加しましたが、11月は9.2%減少しました。

日本人の平均利用時間は、10月が61.3時間、11月は62.4時間でした。平均利用時間は増加傾向にあります。


★アクティブ・レジデンンツ・全体 

アクティブ・レジデンツ全体の人数は、10月が55万9,820人、11月が54万3,375人でした。対前月比では、10月が8.5%増加、11月が2.9%減少となっています。

利用時間数の合計は、10月が2,578万6,109時間、11月が2,448万4,939時間でした。対前月比では、10月が7.4%増加、11月が5.0%減少となりました。

平均利用時間は、10月が46.1時間、11月が45.1時間でした。


★アクティブ・レジデンツの年齢層別割合
10月
11月

年齢層別割合は、9月と比較して目立った変動はありませんでした。年齢層別の平均利用時間では、年齢層が高くなるにしたがって、利用時間が長くなる傾向が相変わらず続いています。


★マネーサプライ


10月末のマネーサプライは、37億5,352万6,684リンデンドル、日本円に換算して 約16億500万円でした。(1米国ドル=267.5912リンデンドル=114.42円)

11月末のマネーサプライは、39億4,708万9,947リンデンドル、日本円に換算して 約16億8,800万円でした。

対前月比の増加率は、10月が4.8%、11月が5.2%でした。


★リンデンドルの為替市場(LindeX)  

リンデンドルの為替市場(LindeX)における取引高の推移は次のとおりです。


10月のリンデンドルの為替取引高は18億9,792万8,164リンデンドル、日本円にして約8億1,200万円。対前月比で5.7%の増加となりました。

11月のリンデンドルの為替取引高は19億5,224万5,111リンデンドル、日本円にして約8億3,500万円。対前月比で2.9%の増加となりました。

リンデンラボ社の新規発行売却高は、10月が1億7,483万9,359リンデンドル(約7,500万円)、11月が1億4,019万9,928リンデンドル(約6,000万円)でした。

対前月比では、10月が14.8%増加、11月は19.8%減少となりました。


★土地


10月末の土地の合計面積は、904.50平方キロメートル。うち、メインランドが186.35平方キロメートル、プライベートアイランドは718.14平方キロメートルでした。

11月末の土地の合計面積は、939.11平方キロメートル。うち、メインランドが184.00平方キロメートル、プライベートアイランドは755.10平方キロメートルでした。

対前月比では、全体については、10月、11月ともにそれぞれ3.8%増加。プライベートアイランドについては、10月が4.6%増加、11月も5.1%増加しました。メインランドについては、10月は1.0%増加しましたが、11月は1.3%減少しています。

メインランドで新規に造成された土地は、米国ドル建てのオークションを通じて、住民たちに供給されることになっていますが、10月7日を最後に、供給が止まっています。


★まとめ

10月、11月の主な動きとしては、総利用時間数が11月に減少したこと、およびメインランドの土地がが11月に減少したことです。

ただし、LindeXにおける為替取引高およびマネーサプライは増加していますので、経済活動は伸びているようです。

ところで、9月28日から、EU諸国からのユーザについては、リンデンラボ社への各種支払いに対してVATが適用されました(ただし、土地使用料については10月28日から適用)。VATの税率は国によって異なりますが、15-25%と比較的高いため、経済活動への悪影響が懸念されていました。しかし、LindeXおよびマネーサプライのデータから見る限り、VATによる影響はあまり大きくなかったようです。

メインランドの土地が減少したのは、統計データの提供が開始されて以来、2度目のことです。現在、リンデンラボ社は、メインランドにおいては、土地のリサイクル、つまり、何らかの理由でリンデンラボ社の再保有となった土地の売却に力を注いでおり、上にも述べたとおり、新規造成の土地の売り出しは行っておりません。しかし、2008年1月からは、シム単位の広さの土地の売却を再開するとしていますので、来年1月以降は、メインランドの土地が増加するものと思われます。

日本人については、人数では7月をピークに減少傾向にあり、利用時間数でも11月は減少に転じました。しかし、平均利用時間は増加傾向にあり、11月の平均利用時間は62.4時間。これは、アクティブレジデンツ全体の平均である、45.1時間を大きく上回る数字となっています。

2007年10月29日月曜日

リンデンラボ社発表の9月のKey Metricsより

少し遅くなりましたが、セカンドライフの公式ブログで、9月のKey Metricsが発表されましたので、その中からいくつかの項目をピックアップしてご紹介します。

★総利用時間


9月の総利用時間は2,413万8,413時間。前月比で2.9%増加しました。


★住民数、ユーザー数、プレミアム会員数の推移

9月末の住民数は959万6,742人でした。住民数というのは個々のアバターの数です。一人のユーザーが複数のアバターを持つ場合あります。


9月末のユーザー数は673万6,832人、 プレミアム会員数は9万1,054人でした。プレミアム会員数だけの推移を表わしたグラフは次のとおりです。


対前月比の増加率は、住民数が3.7%、ユーザー数が9.3%、プレミアム会員数が0.5%でした。

対前月比の増加率は、前の月比べて、住民数とプレミアム会員数については減少していますが、ユーザー数については、上昇しています。


★性別比(アカウント登録時に申告した性別)

アカウント数による男女比の推移は次のとおりです。
9月は男性が72.49%、女性が27.51%でした。


利用時間による男女比の推移は次のとおりです。
9月は男性が57.75%、女性が42.25%でした。


時間数と人数については実数も提供されてますので、男女別に平均利用時間を出してみると、男性が21.2時間であるのに対し、女性は40.9時間となっています。


★アクティブ・レジデンンツ全体および国別

国別のアクティブ・レジデンツ(1ヶ月間のログイン時間が1時間を超える住民)の上位10カ国は次のとおりです。


日本のアクティブ・レジデンツの数は3万5,841人。人数では第4位となりました。先月の第2位から順位を下げています。実数でも8月が4万1,709人でしたので、14.1%減少しています。

利用時間では第3位で、8月の順位と同じです。実数では、8月が175万410時間、9月が199万3,056時間と増加しています。対前月比の伸び率は、13.9%でした。

日本人の平均利用時間は、8月が42.0時間でしたが、9月は55.6時間と、大幅に増加しました。 

アクティブ・レジデンツ全体の合計は、人数が51万6,149人、利用時間数が2,400万909時間でした。

対前月比では、人数が4.4%減少しましたが、利用時間数が3.0%増加しています。したがって、平均利用時間は前月の43.1時間より増加し、46.5時間となっています。


★アクティブ・レジデンツの年齢層別割合


年齢層別割合は、先月と比較して目立った変動はありませんでした。

年齢層別の平均利用時間を見てみると、年齢が高くなるにつれて、平均利用時間が長くなっていることがわかります。全体の平均利用時間が46.5時間ですので、45歳以上の年齢層の平均利用時間が64.1時間と、他の年齢層と比べてかなり長いことがわかります。


★マネーサプライ


9月末のマネーサプライは、35億8,129万4,930リンデンドル、日本円に換算して 約15億2,500万円でした。(1米国ドル=268.2207リンデンドル=114.21円)

対前月比の増加率は6.2%でした。

なお、今回発表されたキーメトリックスと、前回のキーメトリックスとでは、8月末の残高の数字が違っていました。

今回のキーメトリックスにおける8月末残高は33億7,284万8,267リンデンドルでしたが、前回発表のキーメトリックスにおける8月末残高は33億8,016万7,063リンデンドルでした。リンデンドルの取引はコンピュータで自動集計されているはずですが、システムが時々トラブルを起こしますので、それを原因とする修正かも知れません。


★リンデンドルの為替市場(LindeX)

リンデンドルの為替市場(LindeX)の取引高の推移は次のとおりです。


9月のリンデンドルの為替取引高は17億9,502万5,178リンデンドル、日本円にして約7億6,400万円。対前月比で1.0%の増加となりました。

なお、前述のマネーサプライと同様に、取引高の8月の数字が、今回のキーメトリックスでは変更になっています。前回のレポートでは、8月の対前月比を3.4%の減少とお伝えしましたが、今回のキーメトリックスに基づいた、8月の対前月比は9.1%の減少でした。

リンデンラボ社の新規発行売却高は1億5,229万8,936リンデンドル(約6,500万円)。

対前月比では、251.8%の大幅増加となりました。これは、グラフからわかるとおり、8月の落ち込みが激しかったためで、9月は以前の水準に戻ったというところでしょうか。


★土地


9月末の土地の合計面積は、871.32平方キロメートル。うち、メインランドが184.57平方キロメートル、プライベートアイランドは686.75平方キロメートルでした。

対前月比の増加率は、全体では3.8%の伸び。プライベートアイランドは、5.6%増加しましたが、メインランドは2.6%減少しています。

メインランドの土地が減少したのは、統計データが提供されている期間の中では初めてのことです。

なお、9月にはオークションで売却された、シム単位の広さの土地の物件数が極端に減少しました。8月が351物件だったのに対し、9月は54物件でした。

また、9月中にはオークションのシステムが変更になりました。変更前、オークションの落札価格は下落傾向にあり、変更前の平均落札価格は1,500米国ドル前後でしたが、変更後は落札価格が上昇し、落札価格が2,500米国ドルに達する物件もでました。


★まとめ

9月の主な動きとしては、総利用時間数が上昇に転じたこと、アクティブ・レジデンツの人数が2ヶ月連続して減少したものの、利用時間数が上昇に転じたこと、リンデンラボ社によるリンデンドルの新規発行売却高が以前の水準に戻ったこと、メインランドの土地が減少したことです。

また、日本人については、人数は減ったものの、総利用時間が伸びており、アクティブ・レジデンツ全体の総利用時間の対前月比増加率3.0%を大幅に上回る、13.9%の伸びを見せました。

ところで、7月25日にはギャンブル禁止令が実施されましたが、リンデンラボ社のJohn Zdanowski (Zee Linden, CFO of Linden Lab)によれば、ギャンブル禁止令のマネーサプライへの影響は3%だったとのことです。
ソース:SLNN 
Virtual Worlds Fall 07 currency panel speaks about virtual currency, real regulations

2007年10月6日土曜日

リンデンラボ社発表の8月のKey Metricsより

少し遅くなりましたが、セカンドライフの公式ブログで、8月のKey Metricsが発表されましたので、その中からいくつかの項目をピックアップしてご紹介します。

★総利用時間


8月の総利用時間は2,345万5,451時間で、対前月比で0.8%低下しました。総利用時間が減少したのは、2006年2月以来のことです。


★住民数、ユーザー数、プレミアム会員数の推移


8月末の住民数は925万2,781人でした。住民数というのは個々のアバターの数です。一人のユーザーが複数のアバターを持つ場合あります。

8月末のユーザー数は616万4,951人、 プレミアム会員数は9万600人でした。プレミアム会員数だけの推移を表わしたグラフは次のとおりです。


対前月比の増加率は、住民数が8.2%、ユーザー数が8.0%、プレミアム会員数が2.0%でした。

対前月比の増加率は、住民数、ユーザー数ともその前の月よりも減少しています。なお、プレミアム会員数については、7月に処理方法の変更による一時的減少がありました。


★性別比(アカウント登録時に申告した性別)

その月にログインした住民の人数による男女比の推移は次のとおりです。

8月は男性が74.13%、女性が25.87%でした。

その月にログインした住民の利用時間による男女比の推移は次のとおりです。

8月の男女比は男性が57.92%、女性が42.08%でした。

時間数と人数については実数も提供されてますので、男女別に平均利用時間を出してみると、男性が18.8時間であるのに対し、女性は39.2時間となりました。


★アクティブ・レジデンンツ全体および国別
 
国別のアクティブ・レジデンツ(1ヶ月間のログイン時間が1時間を超える住民)の上位10カ国は次のとおりです。


日本のアクティブ・レジデンツの数は4万1,709人。人数では第2位となりました。先月の第3位から順位を上げてますが、実数では7月が4万4,847人でしたので減少しています。

利用時間では第3位で、7月の順位と同じです。実数では、7月が156万3,899時間であったのに対し、8月は175万410時間と増加しています。

日本人の平均利用時間は、7月が34.9時間でしたが、8月は42.0時間と増加しました。 

アクティブ・レジデンツ全体の合計は、人数が54万151人、利用時間数が2,330万913時間でした。対前月比では、人数が3.8%減少、利用時間数が0.7%減少となっています。 平均利用時間は43.1時間でした。


★アクティブ・レジデンツの年齢層別割合

年齢層別では、先月と比較して目立った変動はありませんでした。

アバター数、利用時間数ともに実数が提供されていますので、今回はそれを元に、年齢層別の平均利用時間を算出してみました。45歳以上の年齢層の利用時間が60.6時間と、他の年齢層と比べて長いことがわかります。


★マネーサプライ

8月末のマネーサプライは、33億8,016万7,063リンデンドル、日本円に換算して 約14億6,600万円でした。(1米国ドル=268.7464リンデンドル=116.58円)

対前月比の増加率は3.6%でした。

なお、リンデンラボ社がmoney supplyという用語を使用していますので、当ブログでもそれに倣ってマネーサプライという用語を使用していますが、実際にはマネタリーベースに近いものです。

セカンドライフには、すでに銀行が複数行存在し、貸し出しを行っていますので、本来の意味でのマネーサプライもあるはずなのですが、銀行の実態を把握するのが困難なため、それを算出するのは困難です。


★リンデンドルの為替市場(LindeX)  

リンデンドルの為替市場(LindeX)の取引高の推移は次のとおりです。

8月のリンデンドルの為替取引高は18億8,812万2,014リンデンドル、日本円にして約8億1,900万円。対前月比で3.4%の減少となりました。

リンデンラボ社の新規発行売却高は4,328万7,003リンデンドル(約1,900万円)。対前月比で72.8%の大幅減少となりました。

なお、リンデンドルから他通貨への両替を扱っているのはLindeXだけではありません。主なところでは、ショッピングサイトであるSL Exchangeや、銀行サービスを提供しているapezなど。そのようなところの取扱高は不明ですので、為替市場全体の規模を把握するのは、現在のところ不可能です。


★土地

8月末の土地の合計面積は、839.72平方キロメートル。うち、メインランドが189.41平方キロメートル、プライベートアイランドは650.31平方キロメートルでした。

対前月比の増加率は、全体では7.7%の伸び。メインイランドの増加率が6.0%、プライベートアイランドの増加率が8.2%でした。プライベートアイランド、メインランドとも、対前月比の増加率は、その前の月より減少しています。


★まとめ

8月は、総利用時間数の減少、アクティブ・レジデンツの人数および利用時間数の減少、リンデンラボ社によるリンデンドルの新規発行売却高の大幅減少が目に付きます。

これらの要因として考えられるものは次のとおりです。

7月25日のギャンブル禁止令実施
サマーリセション・・・夏にバカンスに出かける人が多く、そのためセカンドライフへの接続が減った
8月上旬に起きたGinko Financialの事実上の破綻

LindeXにてリンデンラボ社が新規発行売却するリンデンドルは、市場の需要に基づいたものです。その金額が大幅に減少したということは、インワールドの経済の成長が減速していると言えるのかもしれません。

なお、7月のキーメトリックスには、パフォーマンス指標が掲載されていましたが、8月のキーメトリックスには掲載されていません。

パフォーマンスに関する指標は、Second Life Grid: Quality Metricsというページに掲載されています。

2007年9月13日木曜日

最近の景気動向・・・ギャンブル禁止令の影響は?

7月下旬にリンデンラボ社が実施したギャンブル禁止令が、セカンドライフの経済にどのくらいの影響を及ぼしたのかを見るために、グラフを作成してみました。(6月18日-9月11日)

使用したデータは、Second Life Insiderで毎日発表されている、「インワールドにおける過去24時間の取引額」(米国ドル換算額)および「同時接続人数の1日における中央値」です。(データが取得できなかった日のグラフは空白になっています。)


ギャンブル禁止令が実施されたのは7月25日。グラフからわかるように、7月29日以降、取引額は減少しており、現在までその傾向が続いています。

同時接続人数のグラフが落ち込んでいる日がところどころにありますが、これは、メンテナンス日、または、システムに深刻なトラブルが発生した日です。

取引高の減少の要因としては、サマーリセッション(注)も考えられますが、バカンス時期の同時接続人数が減少していないことから、7月29日以降の取引高の減少はギャンブル禁止令の影響によるところが大きいものと思われます。

(注:夏はバカンスに出かける人が多く、そのためセカンドライフへの接続が減り、それによって景気後退が起こること)

そしてその影響の大きさですが、実質的な大きさは、グラフから読み取れる取引額の減少分よりもかなり小さいのではないかと思います。

グラフに使用した「インワールドにおける過去24時間の取引額」のデータは、もともとはリンデンラボ社から提供されているものですが、この金額はモノ・サービスの売買などの商取引のみを表しているわけではなく、アバター間のお金のやり取りを単純に、自動的に集計したもののようです。(ソース:SECOND LIFE HERALD "$1.6 Million US Dollars Spent," and It's Fake (ok, what else is being faked?) ")

ギャンブルというのは、勝ったり負けたりと、お金のやり取りが何回も発生するものです。ですから、取引額を膨らませる要因になります。すなわち、プレイヤー同士、またはプレイヤーと胴元とのお金のやり取りはすべて取引額としてカウントされてしまいますが、胴元の売上げとなるのはその一部分であり、ギャンブルでのお金のやり取りの合計と比較すると、かなり小さなものとなります。

したがって、グラフで見ると、ギャンブル禁止令後の取引額は約4割も落ち込んでいますが、ギャンブル禁止令がセカンドライフの経済に与えた実質的な影響は、もう少し小さくなるはずです。

なお、7月28日は、インワールドの取引額が突出していますが(443万3,000米国ドル)、この日のデータが本当に正確なものなのかどうか疑問です。

前日の7月27日には、Ginkoの取付け騒ぎが起こっています。その結果Ginkoは、資金不足に陥り、引き出し限度額を大幅に下げたわけですが、その当時の預金残高は、約1億9,200万リンデンドル、米国ドルに換算して約71万米国ドルです。

ユーザがGinkoから預金を引き出した分も、インワールド内の取引額としてカウントされます。しかし、7月28日の取引額は、Ginkoの預金残高をはるかに上回るものであり、取付け騒ぎ時のお金のやり取りを反映しているとは思えません。7月28日のデータはSecond Life Insiderの記事の誤植のような気がします。

2007年9月8日土曜日

メインランドのオークション

★落札価格の推移(シム単位またはそれに準じた広さのもの)

リンデンラボ社がメインランドで新規に造成した土地は、オークションで米国ドル建てで売却されます(1シムに相当する広さ6万5,536平方メートルのもの、またはそれに準じるもの)。

9月5日までに終了した米国ドル建てオークションのうち、シムまたはそれに準じた広さのもの(55,000 平方メートル以上)の落札価格の推移を表わしたものが次のグラフです。赤のラインがその月の落札価格の幅、青のラインが平均落札価格を示しています。

ソース:Second Life Auction Statistics

月ごとのオークション個数は次のようになっています。

ソース:Second Life Auction Statistics 

平均落札価格は、6月には少々上昇しましたが、それ以降、再び、下降しています。特に、8月には351個もの大量のシムがオークションに出され、それに呼応して、平均落札価格も大幅に低下しました。

9月に入ってからも落札価格は下がり続けています。フルの広さをもつシム(6万5,536平方メートル)の物件で、落札価格が1,400米国ドルを切るものも出てきました。


★リンデンラボ社の土地価格政策

8月1日付のロイターの記事の中で、オークション担当のJack Lindenは次のように述べています。

“Mainland price has been on a fairly controlled and gradual downward trend since early this year, when it was arguably too high at L$12 per meter. We’re now at a healthier L$8 - L$9 per meter,” he said. “We’re pretty careful about how we manage land supply,” Jack Linden said. “Clearly a lower L$ per meter level helps new premium members step onto the land ownership ladder.”

(メインランドの地価は、かなり統制されており、今年の初めから穏やかな下降基調にある。今年初めの土地の単価は、L$12/sqmで、これは高すぎた。現在は、より適正な価格であるL$8 - L$9/sqmになっている。リンデンラボ社は、土地の供給量の調節について、かなり注意を払っている。土地単価が下落すれば、新規プレミアム会員が土地を購入するようになることは明らかだ。)

リンデンラボ社は、8月に入ってから大量の土地をオークションに出し始めました。8月1日から15日までにクローズした物件は206シム。7月は月間で147シムでしたので、8月前半だけで、7月の数字を上回っています。

このような状況を受けて、小売りの地価も急激に下がりました。

小売り物件の最低単価(512平方メートル以上の広さの土地)

7月18日 L$9.6/sqm
7月25日 L$9.6/sqm
8月1日 L$9.1/sqm
8月8日 L$7.8/sqm
8月15日 L$6.1/sqm

8月14日には公式ブログで、リンデンラボ社は次のような発表を行いました。

・コミュニティにより有益な情報を提供するため、今後はオークションに出すシムの1日当たりの個数を事前に予告する。
・8月15日から月末までは、平均して1日当たり10個のシムをオークションに出すものとする。

8月29日には公式ブログで、再び、供給数の予告を行いました。9月1日から14日までにオークションに出されるシムの数は1日当たり最高で8個とのことです。

なお、リンデンラボ社がターゲットとしている小売りの土地単価はL$6/sqmとのこと。これは、リンデンラボ社のスタッフが住民向けに開いているミーティングの席上で明らかにされたものです。(ソース:Nock Foragerさんのブログ

ところで、リンデンラボ社は7月31日にオークションの最低入札価格の変更を行いました。それまでは1,000米国ドルだったものを、1,250米国ドルに変更しました。

その当時、シムの落札価格は2,000米国ドルを上回っていましたので、なぜ、このような変更を行うのか、非常に不思議に思いました。しかし、その後の落札価格の推移をみると、大幅下落を見越しての変更だったことがわかります。

小売り物件のここ数日の最低単価は、L$5.9/sqmです。リンデンラボ社の土地の価格調節はうまく行っていると言えるでしょう。

2007年9月2日日曜日

リンデンラボ社発表の7月のKey Metricsより

セカンドライフの公式ブログで、7月のKey Metricsが発表されましたので、その中からいくつかの項目をピックアップしてご紹介します。

★住民数、ユーザー数、プレミアム会員数の推移


7月末の住民数は854万8,178人でした。住民数というのは個々のアバターの数です。一人のユーザーが複数のアバターを持つ場合あります。

7月末のユーザー数は570万6,958人、 プレミアム会員数は8万8,797人でした。プレミアム会員数だけの推移を表わしたグラフは次のとおりです。

対前月比の伸び率は、住民数が+10.6%、ユーザー数が+9.2%、プレミアム会員数が-6.1%でした。対前月比の伸び率を先月と比較すると、いずれも低下しています。

プレミアム会員数の減少の理由については、リンデンラボ社のKey Metrics担当のMeta Lindenが、ロイターの記事で次のようにコメントしています。

“The most significant reason for the drop in premium numbers was the enactment of a program to put accounts on hold that were in arrears with us,”

(プレミアム会員数の減少の最大の理由は、支払いが滞っているアカウントを停止処分にするという処理方法を開始したからだ。)

また、プレミアム会員数の減少とギャンブル禁止措置との間には相関関係が見られないとも述べています。

ちなみに、ギャンブル禁止措置が実施されたのは7月25日でした。


★性別比(アカウント登録時に申告した性別)

アカウント数による男女比の推移は次のとおりです。

7月は男性が75.67%、女性が24.33%でした。

利用時間による男女比の推移は次のとおりです。

7月の男女比は男性が57.87%、女性が42.13%でした。

Key Metricsでは、実数も提供されてますので、それぞれ男女別に時間数の合計を人数の合計で割って、平均利用時間を出してみると、男性が17.41時間であるのに対し、女性は39.42時間となりました。


★アクティブ・レジデンンツの国別および全体

国別のアクティブ・レジデンツ(過去1ヶ月間のログイン時間が1時間を超える住民)の上位10カ国は次のとおりです。

日本のアクティブ・レジデンツの数は4万4,847人。人数、利用時間とともに第3位で、先月の第6位からそれぞれ順位を上げています。

ちなみに、日本語版がリリースされたのは7月13日でした。

日本人の平均利用時間は、34.87時間でした。 

アクティブ・レジデンツ全体の合計は、人数が56万1,485人、利用時間数が2,347万3,975時間でした。対前月比では、人数が13.4%増加、利用時間数が24.1%増加となっています。


★アクティブ・レジデンツの年齢層別割合

            アバター数   利用時間

13-17(teen grid)     0.86 %      0.73 %
18-24          26.74      17.32
25-34          37.52      36.16
35-44           21.92      27.05
45以上          12.44      18.14
不明            0.52       0.60

利用時間で見ると、35歳以上が全体の45.19%を占めています。


★マネーサプライ

7月末のマネーサプライは、32億6,236万7,543リンデンドル、日本円に換算して 約14億1,000万円でした。(1米国ドル=268.8369リンデンドル=116.23円)


対前月比の増加率は8.0%でした。対前月比の増加率は、12月をピークに低下傾向が続いていましたが、先月の対前月比増加率が6.7%でしたので、今月は上昇しました。



★リンデンドルの為替市場(LindeX)  

リンデンドルの為替市場(LindeX)の取引高の推移は次のとおりです。

7月のリンデンドルの為替取引高は19億5,425万6,648リンデンドル、日本円にして約8億4,500万円。対前月比で7.1%の増加となりました。

リンデンラボ社の新規発行売却高は1億5,907万4,702リンデンドル(約6,900万円)。対前月比で1.7%の減少となりました。

なお、リンデンドルから他通貨への両替を扱っているのはLindeXだけではありません。主なところでは、ショッピングサイトであるSL Exchangeや、銀行サービスを提供しているapezなど。そのようなところの取扱高は不明ですので、為替市場全体の規模を把握するのは、現在のところ不可能です。



★経済安定のしくみ

リンデンドルの為替レートは、ここ1年ぐらいは1米国ドル=270リンデンドル前後で推移し、非常に安定していると言えます。

リンデンラボ社は公式ブログで、The Second Life Economyというエントリを掲載し、リンデンドルの価値の下落とハイパーインフレを防ぐ方法、すなわち、マネーサプライを適正水準に保つための手段について説明しています。

それによれば、これまでは、セカンドライフの規模の拡大に応じて通貨量を増やしてきましたが、将来、人口の伸びが安定化したときには、通貨量を減少させるための手段を多用するかもしれないとのこと。

また、そのひとつの手段として、現在、米国ドル建てで徴収している土地の売却代金と土地使用料を、1ヶ月間だけリンデンドル建てで徴収すれば、リンデンドルのマネーサプライを一気に半分以下に減少させることができるとのことでした。

しかし、土地ビジネスはリンデンラボ社にとって、主要な収入源です。上述の手段をとる前に、スティペンドの減額、アップロード代の値上げ、あるいはインワールドでの独自アイテムの販売など、米国ドル建ての収入を減らさずにリンデンドルの流通量を減らす手段を、まずはとってくるのではないでしょうか。


★土地

7月末の土地の合計面積は、779.95平方キロメートル。うち、メインランドが178.76平方キロメートル、プライベートアイランドは601.19平方キロメートルでした。


対前月比の増加率は、全体では9.5%の伸び。メインイランドの増加率が7.3%、プライベートアイランドの増加率が10.1%でした。プライベートアイランドの対前月比の増加率は、前月より1ポイント低下していますが、メインランドの増加率は3.2ポイント上昇しました。


★新しい指標・・・システムのパフォーマンス

リンデンラボ社は、今回から、システムのパフォーマンスを表す8つの指標を新たに公開しました。

これは、以前のエントリでも触れましたが、リンデンラボ社の姿勢が、セカンドライフの拡大よりも、システム安定性重視の方向に変わってきたことの表れだと思います。最近の公式ブログでは、システムのトラブルがあった際に、どんなトラブルであったのかを詳しく説明するようになりました。

しかし、「システムの安定性の向上に努めています」といくら言葉で主張しても、もしもユーザが、ログイン中にクラッシュを1度でも経験したならば、その言葉を信じるのはたぶん難しいでしょう。

ですから、具体的な数値を示すことで、リンデンラボ社の姿勢をユーザに理解してもらうつもりなのだろうと思います。

さて、その指標ですが、以下のとおりです。公表された数値は、今年の1月からの日毎の数値ですが、月の平均で見るとあまり大きな変化はありませんでしたので、7月の平均値のみを併せて記載しました。

1 異常終了したセッションの割合 22.35%

2 シムから落とされたユーザの割合 7.20%

3 ビューアがクラッシュしたことを報告したユーザの割合 7.57%


サーバサイド指標

4 % of daily usage with sim > 35 FPS 97.19%

5 % of daily usage with sim > 20 FPS 99.38%

(これらの指標の正確な意味は不明ですが、おそらく、シムのパフォーマンスが、それぞれ35FPS、20FPSを超えたシムの数の割合だと思います。daily usageが1日のある一時点で測定した値か、または1日の平均値を意味しているのかは、不明です。)

クライアントサイド指標

6 Highest Viewer FPS for lowest quartile  6.82
パフォーマンスの数値が下位25%に属するビューアの最高FPS)

7 Median Viewer FPS  12.80
(平均FPS)

8 Lowest Viewer FPS for highest quartile  21.18
(パフォーマンスの数値が上位25%に属するビューアの最低FPS)

2007年8月28日火曜日

Philip Rosedaleのロイターとインタビューより

リンデンラボ社のCEOであるPhilip Rosedaleがロイターとのインタビューで、なかなか興味深いことを話していましたので、重要だと思われるところを拾ってみました。

1. Linden is roughly profitable.

「リンデンラボ社は大雑把に言って儲かっている。」

リンデンラボ社が倒産でもしたら、リンデンドルは一気に無価値になってしまう可能性があります。また、セカンドライフ内の各個人の資産が失われてしまう可能性もあります。ですから、ユーザとしては、リンデンラボ社の財務状況が大いに気になるところです。

公開企業ではないので、財務状況の情報開示をする必要がなく、本当のことを言っているのかどうか疑問は残りますが・・・。

2. By far the largest source of income to Linden Lab is the sales and the tier fees.

「リンデンラボ社の最大の収入源は(土地の)販売と土地使用料である。」

私がいつもチェックしている、On Off and beyondというブログに、リンデンラボ社の収入源別に総収入を推計をしたグラフが掲載されています。上記のPhilip Rosedaleの言葉は、その推計のグラフと一致するようです。
ソース:「On Off and beyond [渡辺千賀]テクノロジー・ベンチャー・シリコンバレーの暮らし」より転載


3. 土地ビジネスが最大の収入源になっているにもかかわらず、サーバのオープンソース化を目指していることを尋ねられて

We believe we can reasonably make money — barely make money — by just charging access to the system.

「システムへのアクセス料金をとることで、まあまあ金儲けができると思っている。」(barelyの部分は、「かろうじて、どうにかこうにか」の意味ですが、ここでの意味が良くわからないので省略してます。どなたかご教示を。)

リンデンラボ社は、サーバのオープンソース化後、各企業や各個人が独自に設置したサーバを、もし、希望があればリンデンラボ社のシステムと接続し、その接続料を取るとのことです。

人々に何かを売りたいと考えている企業であれば、オープンソースによって独自に設置した自社サーバを、ユーザが多数いるところ、すなわちリンデンラボ社のサーバのネットワークとリンクしたいと考えるであろうということも、Philip Rosedaleは述べています。

ところで、最近、リンデンラボ社は、メインランドの土地を大量に新規造成し、それをオークションで売り出しています。その結果、メインランドの地価がかなり下がりました。

Second Citizenというフォーラムの土地に関するスレッドを見てみると、6月中旬には、いちばん安い土地の土地単価が1平方メートル当たり10リンデンドル前後でした。しかし、今日、8月28日には、それが6.1リンデンドルまで低下しています。

つまり、地価を大幅に引き下げることによって、アクティブユーザ数を増加させ(注)、十分なユーザ数を確保した上で、サーバをオープン化する戦略だと思われます。
(注:ユーザが土地を購入すれば、セカンドライフにコミットする度合いが高くなると考えられます。)


4. システムの信頼性について

We need to get to the place where Second Life is as reliable running on your PC or a Mac as an Internet browser.

「セカンドライフ(のシステム)の信頼性が、インターネット・ブラウザ並みに高まる必要がある。」

この発言にも関連しますが、8月24日から26日にかけて、シカゴでSecond Life Community Convention 07というイベントが開かれ、その基調講演で、Philip Rosedaleは最初に、システムの信頼性が低いことを謝りました。

バグの修正と新機能の導入とのどちらが重要かとのロイターの質問に対しては、バグの修正と答えています。ボイスの導入が済んだので、他に必要不可欠な重要機能はないと考えているとのことです。

なお、上述の基調講演の中で、開発のスピードを重視したために信頼性がおろそかになったことを認めており、また、その後規模が拡大し、いまは転換点にいるとも述べています。

5. リンデンラボ社の株式を公開するつもりがあるかどうかを尋ねられて

No. We’re profitable now and sustainable, ...

「ない。リンデンラボ社は今、利益が出ているし、このままやっていける。」

6. 現実社会の法とセカンドライフ内の規制の関係について

将来、ユーザの国籍によって、そのアバターのセカンドライフ内での行動が規制されるようになるかもしれないとのことです。

7. 今後6ヶ月間の最重要課題はと尋ねられて

Quality. We’re at a place where we’ve demonstrated that the virtual world can exist. Now we need to make it high quality so it does continuously support the activities and desires of the people who are using it.

「クオリティ。リンデンラボ社は、ヴァーチャルワールドが存在し得るということを(世間に対して)すでに示した。今は、ユーザの活動と願望に常に応えられるように、このヴァーチャルワールドのクオリティを高めることが必要だ。」


このインタビューを読んだ感想ですが、リンデンラボ社はユーザ重視の方向に変わってきたようです。

オープンソース化後の戦略を睨んでのことかもしれませんが、最近の登録者数の伸び率の鈍化、また、おそらく定着率が低いことに危機感を抱いたのかもしれません。

ところで、リンデンラボ社は最近、日本でPR担当の企業を雇ったそうです。ユーザ重視の姿勢に変わってきたのであれば、上述のSLCCでの基調講演の翻訳文ぐらいは出してもらえないのかなとも思います。やはり、リンデンラボ社のCEOが何を考えているのかを知ることは、セカンドライフで何かをしようとするときに、とても重要なことだと思いますので。

最近の金融市場・・・International Stock Exchange(ISE)、SL Capital Exchange(SL CapEx)

8月3日のエントリでもお伝えしましたように、7月下旬にWorld Stock Exchange(WSE)は新システムであるWE3.0を稼動させました。しかしそのシステムにかなりの不具合があり、まともに取引が行えない状態であったため、それに不満を抱いた上場企業9社がWSEから他の株式市場に、自社銘柄を移してしまいました。

そして、そのうちの8社の移動先がInternational Stock Exchange(ISE)でした。


★ISEがオークションに

ISEは、セカンドライフにある3つの株式市場の中では一番規模の小さな市場であり、8社が移ってくる前は、1日の取引高が10万リンデンドルに満たないことがほとんどでした。しかし8社が移ったことで取引高が大幅に増加しました。

そのような中、8月19日にISEのCEOであるCocky Daggerが、ISEをオークションによって売却することを発表しました。入札締め切りは8月21日。ただしオークションといっても最高額入札者が必ずしも購入できるわけではなく、Cocky Daggerを除く、ISEの株主たちの投票による承認が必要とのことでした。

売却の理由は、"I am spreading myself too thin with the ISE. "、つまり、ISE運営に関わる仕事量が多すぎて、十分に手が回らないからだそうです。

なお、売却対象となったISEの内容は次のとおりです。


資産 (単位:リンデンドル)
-----------------------------------------
現金 160万

預金 78万
有価証券 18万
ホストサーバのレンタルの権利4か月分
ソフトウェア-ウェッブサイト、ATMのコード、インワールドの取引システム、ティッカーのコード
土地 2,500平方メートル
広告の前払い費用 3万5000


負債
-----------------------------------------
預り金 200万

不祥事に対応するための保険としての積立金 17万6000


当月の予想収支
-----------------------------------------
収入 35万

費用 10万

上記の予想収支を見ると、費用の中にまともな人件費が含まれてるとは思えません。どうも、今までCocky Daggerが無償で運営していたようです。もちろん、利益は株主に配当されますので、大株主であるCocky Daggerはその利益の大部分を受け取っていたでしょう。しかし、上記の予想収支から算出される利益は25万リンデンドル、日本円で約11万円。運営にかかる手間と時間を考えると、割りに合わない金額だったのかもしれません。


★ISE版Rule 144の実施とその反応

オークション実施の発表後、しばらくしてから、Cocky Daggerはさらに、ISE版Rule 144を実施すると発表しました。

ISE版Rule 144とは米国証券取引法第144条の趣旨を受け継いだもので、一般投資家保護のため、上場企業のCEO等が保有する株式の取引を規制するものです。

その具体的な内容ですが、もし、あるアバターがそのIPアドレスから、上場企業のCEOのアルト(注)であると判明した場合には、そのCEOとアルトの過去10日間の取引を公表するとのことです。

(注:セカンドライフでは一人の人が複数のアバターを持つことが可能です。その場合、メインのアバター以外のアバターをアルトと呼んでいます。)

つまり、このRule 144を実施することにより、インサイダー取引を防止するとともに、アルトを使った不正な株価操作を防止しようというわけです。

Cocky Daggerは、Rule 144の実施が投資家たちのからの強い要請によるものであることも明らかにしています。

ところが、このRule 144実施の発表後、上場企業のうちの6社がISEから離脱し、新しい株式市場であるVSTEXに移る意思を表明しました。ただし、これら6社のうち、離脱の理由をRule 144の実施にあるとしたところは1社もありません。ある企業は、オークションの方法に同意できないことを理由にし、またある企業は離脱の理由を一切明らかにしませんでした。

ところで、この6社は、7月末から8月初めにかけてWSEからISEに移動してきた8社のうちの6社です。ですから、ISEには約3週間上場しただけで、別の株式市場に移ることになったわけです。

オークションの締切日である8月21日には、ISEの集会が開かれました。その席上でCocky Daggerは、6社の離脱によって状況が大幅に変化したことを理由に、オークションの中止を発表し、またCEOとして今までどおり運営を続けることを明らかにしました。

結局ISEからは、上場企業・IPO企業併せて19社のうち6社が離脱しました。そのためその後、ISEの取引額は大幅に落ち込み、取引額が10万リンデンドルに届かない日々が続いています。

Cocky Daggerは、株式市場の透明化に努めている点でかなり評価されているようですが、ISEの規模自体が小さいため、このまま存続できるのかどうかが心配です。

なお、離脱した6社の移動先であるVSTEXですが、イタリアの会社が運営しているらしく、また同サイトによれば、セカンドライフ初の、コミュニティベースの株式市場だということです。サイトを見ると、同市場の運営を行っているVstex Companyが8月5日にIPOを開始したとのことなので、その時がVSTEXのオープンだと思われます。

またこの原稿を作成している時点で、すでにISEから離脱した6社のうちの5社がこの市場に上場していました。(残りの1社の動向は不明です。)

VSTEXに上場したのは次の5社です。

AVC - Atlas Venture Capital
CGI - Countless Galaxies
BHE - Bart Heart Estates
VHI - Valentine Heart Inc.
KFM - Kristatos Fashion Mall

ところで、このVSTEXの件については、全然情報が流れてきていませんでしたので、正直驚きました。イタリアの会社が運営しているとのことなので、その辺が原因なのかもしれません。このVSTEXについては、後日カバーするつもりです。


★SL Capital Exchange(SL CapEx)が預金利率の引き下げを発表

SL CapExにある各投資家の口座が、銀行であるJT Financialの口座と統合され、その結果、口座の現金残高に日利0.15%(年利換算72%)という高い金利が適用されることになったことを、以前のエントリでお伝えしました。

しかし、8月23日、SL CapEX/JT Financialは、その金利を日利0.12%まで引き下げることを発表しました。理由は、預金量が最近、急に増大したからとのこと。金利改定実施日は9月3日です。

また、同社は長期戦略にも言及し、金利を年末までに0.1%まで引き下げること、その一方で少額預金者優遇の金利を設定することを明らかにしています。

さて、預金量の増大に合わせて、預金金利を引き下げたとのことですが、それでも改定後の金利を年利換算すると54%にもなります。SL CapEX/JT Financialに預金をされる方は、この点に注意が必要だと思います。

2007年8月22日水曜日

最近の金融市場・・・World Stock Exchange(WSE)

★World Internet Currency(WICS)との統合による問題

8月3日のエントリで、World Internet Currency(WICS)という新しい仮想通貨がつくられ、そのWICドルとリンデンドルおよび米国ドルとの交換が可能になったこと、またその為替市場であるWIC Exchangeが開設されたことを紹介しました。

また、そのときに紹介しそこなったのですが、現在、WSEにおける株式取引はWICドル建てでもできるようになっています。

つまり、WICドルという通貨を介在させることにより、セカンドワールド外の投資家をWSEに呼び込もうというWSEの戦略です。

しかし、このWICドルの導入によって、セカンドライフの既存の投資家が不利益を被るケースも出てきました。なぜなら、WSEで株式を売買するときに、どの通貨で取引するかの選択権が売り手側にはないからです。

WSEで株式を売却するときには指値で売りに出します。例えば、投資家が手持ちの一株を10リンデンドルで売りたい場合には、10リンデンドルと指定して買い手がつくのを待つわけです。

ところが、WICドルの導入により、買い手側は、指値である10リンデンドルに相当するWICドル、つまり約0.0377WICドルでもその株が買えるようになりました。どちらの通貨で支払うかは、買い手側が決めることになります。

その結果、場合によっては、売り手側は自分の株式が売れたときに、10リンデンドルではなく、0.0377WICドルを手にすることもあるわけです。

WICドルはWSE以外の場所では使えませんので、住民の多くはWICドルをリンデンドルに両替することを考えると思います。けれどもその両替の過程で、コストが発生します。

WIC Exchangeの現在の為替レートは次のとおりです。

リンデンドル→WICドル   1WICドル=295.57リンデンドル
WICドル→リンデンドル   1WICドル=265.47リンデンドル

WIC Exchangeは、対リンデンドルの為替手数料を明示していませんが、295.57リンデンドルと265.47リンデンドルの差額である30.1リンデンドルの半分、すなわち15.05リンデンドルが、実質的に片道の為替手数料にあたると思います。

今回のWICドルの導入は、セカンドライフの投資家からみれば、欲しくもないWICドルを受け取らされる可能性があり、おまけにそれをリンデンドルに交換するときにコストが発生するわけですから、システムの改悪です。

ところで、WICドルの為替市場であるWIC Exchangeでは、最近、対リンデンドルおよび対米国ドルの為替の他に、対ユーロおよび対オーストラリアドルの為替も始めました。さまざまな通貨を扱うことで利便性を高め、世界中からの投資家をWSEに呼び込もうとの戦略のようです。

また、オーストラリアドルに関しては、近い将来、WIC Exchangeの口座とオーストラリアの銀行口座との間の直接送金を可能にし、オーストラリアの投資家たちにアピールするつもりのようです。

しかし、上述のように、WICドルの導入は、既存の投資家たちにとっては不利益を招きかねないシステムになってしまっています。ですから、新規の投資家たちがWSEに集まる前に、既存の投資家たちがWSEから離れていってしまう可能性も大いにあると思います。

日本人ユーザの中で、Ginkoの倒産により、預金の代償としてGinko Perpetual Bond(GPB)を受け取った方もいらっしゃることと思います。(私のその一人ですが・・・。)WSEでGPBを売却する場合には、上記の点にどうかご留意ください。


★Scripting by Joseph(SBJ)倒産事件

WSEの上場会社であるScripting by Joseph(SBJ)が、8月5日、倒産のアナウンスメントをWSEのサイト上に掲示しました。

WSEは上場廃止になった企業のアナウンスメントをすべて消してしまいますので、そのアナウンスメントを、現在、直接見ることはできませんが、SL Reportsがそれを報じていますので、そこで見ることができます。

それによれば、同社は業績不振のため利益が出せず、倒産したとのこと。また残った資金を、翌日、株主に分配するとのことでした。

セカンドライフの世界では、業績不振からなのか、または最初から騙すつもりだったのか理由はいろいろあると思いますが、企業経営者が株主たちに何も告げずに、突然消えてしまうケースが今までに何件もありました。ですから、同社のケースは、なかなか良心的だと思いました。

ところが、WSEは、8月5日に倒産宣言が出されたにもかかわらず、すぐにはSBJ銘柄を取引停止にはしませんでした。10日近く後の8月16日になってから、やっと上場廃止のアナウンスメントを行いました。

その間、8月7日には、The Second Life Exchange Commission(SLEC)という、独立した証券取引委員会のような組織が、WSEの対応を非難する声明を出しています。(WSEはSLECには加盟していません。SLECについての関連エントリはこちら

また、その間、実際にWSEを何度か見てみたのですが、SBJ銘柄の取引が成立していました。

倒産宣言が出されたにもかかわらず、すぐに対応しなかったWSEの姿勢には大いに疑問を覚えます。そして、倒産宣言後にその株式を購入した投資家たちは、いったい何を考えていたのでしょうか・・・。

2007年8月20日月曜日

最近の金融市場・・・SL Capital Exchange(CapEx)、Allenvest Financial Bank

★SL Capital Exchange(CapEx)

Allenvest International Exchange(AVIX)は8月初旬にJT Financialに買収され、市場名をSL Capital Exchangeに変更して運営されることになりました。(8月7日のエントリ参照)

買収後、新経営陣は株式市場の透明化を図るため、いくつかの新方針を発表しました。


まず、IPOを計画している企業のCEOに、運転免許等の政府発行身分証明書のコピーの提出を義務付けました。

また、各企業には、月次決算報告書を毎月10日までに提出するように義務付けし、提出が遅れた場合には1日につき1,000リンデンドルの罰金、15日までに提出しなかった場合には株式取引の一時停止、30日までに提出しなかった場合には上場廃止および経営幹部の口座凍結などの厳しい制裁措置をとることを決めました。

8月16日には新しいウェッブサイトへの移行、およびインワールドのシステムの移行が完了しました。

ところで、この移行措置の内容なのですが、各投資家がAVIXの口座に保有していた株式はCapExに移行されましたが、現金は移行されず、現金はAllenvest Financial Bankの口座へと移されました。また、CapExの口座は、銀行であるJT Financialの口座と統合されました。したがって、CapExの口座の現金残高にはJT Financialの金利である日利0.15%が適用されることになりました。これは年利に換算すると72.8%にもなります。

Allenvest Financial Bankは、AVIXの元CEOであるInvestor Allenが経営する銀行ですが、大口の預金者である、セカンドライフのある銀行が定期預金を中途解約したため、資金不足に陥り、8月16日には預金引出し限度額を1,000リンデンドル/日まで引き下げました。

同銀行の発表によれば、現在の総預金残高は約1,200万リンデンドル。それに対し、総資産は約2,150万リンデンドルあるとのこと。2週間後には、引出し限度額を25万リンデンドルに戻すとしています。


★リンデンラボ社の警告

ところで、リンデンラボ社は、8月14日に、The Second Life Economyというタイトルの記事を公式ブログに掲示しました。そして、その最後の部分で、同社はセカンドライフ内の銀行を規制する意思はないことを明らかにし、そして、うますぎる話には気をつけるように、住民たちに警告を発しています。

もちろんこれは、最近起きたGinkoの破綻を踏まえた上での意思表明であり、住民間の争いごとにはノータッチという、従来からの同社の姿勢を再度明らかにしたものです。

セカンドライフ内の金融機関に対する規制についてはWIRED NEWSの翻訳記事に簡潔にまとめられています。


★株式市場のデータ

各株式市場の動向を知る上で、各市場の取引高の推移を把握することがひとつのポイントになりますが、残念ながら、現在データを入手できておりません。

WSEとAVIXには、データを提供してくれるようにメールでお願いしてみたのですが、WSEからは正式に断られ、AVIXからは返事をもらえませんでした。両市場とも、PRにはあまり力を入れてないのか、または、人手不足なのかもしれません。

なお、World Stock Exchange(WSE)に関しては、同社のサイトに取引高の推移を示したグラフがあります。(ただし、ブラウザがIEの場合、表示がきちんとされないことがあります。)

また、株価の推移については、World Stock Market Indexという総合指数の推移がsl QUATES.COMに掲載されています。

2007年8月14日火曜日

銀行倒産に備えるための保険・・・The Rock Insurance Co.

最近、Ginko Financialが実質的に破綻し、多くの預金者が損害を被りました。またこのことにより、セカンドライフの金融機関全般に対する人々の信頼度も低下したと言えるでしょう。

金融機関にお金を預けつつ、できればそれを安全に運用したいという人のために、預金保険を提供している保険会社がセカンドライフには存在します。

それが、The Rock Insurance Co.です。

保険の掛け方ですが、金融機関に預金を持っている預金者は、The Rock Insurance Co.からCertificateという証書を購入します。その購入代金が払い込み保険料になります。そして、万が一、預金先の金融機関が倒産した場合には、The Rock Insurance Co.が預金者に、被害額を保障してくれます。

ただし、預金残高の全額が保険の対象となるわけではありません。預け入れ先の金融機関に応じて、対象となる金額の最低と最高が決められています。
 
下の画像は、現在、The Rock Insurance Co.が保険の対象としている金融機関とその保険料率です。株式市場に預けているお金も保険の対象となります。(Allenvest International Exchangeは新株式市場への移行の最中のため、保険の引き受けが一時停止されています。)




例えば、上から2番目に掲載されているJT Financialの場合ですが、預金者は2,000リンデンドルから250,000リンデンドルの範囲で保険をつけられます。保険期間は30日間、保険料率は保険対象金額の1%です。

ちなみに、JT Financialの預金金利は、現在0.15%(日利)。これを30日に換算すると4.59%となります。

ところで、金融機関が倒産した場合、The Rock Insurance Co.はその金融機関を調査し、補償額を決定します。例えば、倒産した金融機関が預金残高の30%しか預金者に支払わない場合は、The Rock Insurance Co.が残りの70%を預金者に支払います。

先日破綻したGinkoの場合ですが、The Rock Insurance Co.はGinkoに財務情報の開示を求めたものの、それを得ることができず、損害の割合を確定することができませんでした。そのため、同社は保険契約者に対して、100%の補償額を支払うことにしました。

ところで、上の画像からわかるとおり、金融機関によって保険料率が異なります。The Rock Insurance Co.は各金融機関から独自に情報を入手し、それによって保険料率を決定しています。
 
The Rock Insurance Co.のCEOである Eliale Morigiによれば、今から3ヶ月前、同社がこのビジネスを開始したころは、各金融機関から情報を得ることができなかったそうです。しかし現在では、多数の金融機関が、インワールドとのリアルワールドの情報を提供してくれているとのことです。  

The Rock Insurance Co.の調査能力がどのくらいのものかはわかりません。けれども、セカンドライフの世界に、信用格付けの機能を有する企業が現れたことは、注目に値すると思います。

2007年8月9日木曜日

Ginko、ついに銀行業務を停止

Ginko Financialがとうとう銀行業務を停止しました。

同社の公式サイトは、預金者たちがログインできない状態になっており、代わりに8月8日22:20(EDT)付けで、長文のアナウンスメントが掲載されています。

それによれば、預金引き出しのリクエストが、約5,000万リンデンドル(約2,200万円)に達しており、現時点で、資産を低価格で処分して預金引出しに応じることは、Ginkoの長期的展望を危うくするとのこと、また、今後、預金者たちのパニックが治まって、Ginkoの業務が通常の状態に戻ることはもう見込めないとのことでした。

さらに、預金者たちの財産を守るためには思い切った方策が必要なこと、そして、その方策として、Ginkoは、現在の預金をすべて強制的にGinko Perpetual Bondに転換することにしたと述べています。

Ginko Perpetual Bondとは、償還期限のない債券です。

上記のアナウンスメントによれば、預金者たちには、預金1リンデンドルにつき、額面1リンデンドルのGinko Perpetual Bondが1枚割り当てられることになります。Ginko Perpetual Bondの金利は、3ヶ月ごとに額面の3%です。

Ginko Perpetual Bondは、現在、World Stock Exchange(WSE)で取引されています。時期は明確には示されていませんが、将来、Ginkoの預金者たちのために、自動的にWSEの口座が開設され、各預金者は、その口座を通じてGinko Perpetual Bondを売却することができるようになるそうです。

この原稿を書いている時点では、まだ私のWSEの口座には、Ginko Perpetual Bondは割り当てられていませんでした。

8月9日20:13現在のGinko Perpetual Bond(銘柄略称GPB)の取引価格は0.19リンデンドル。GPBは額面が1リンデンドルですから、もしも預金と引き換えにもらったGPBをこの価格で売却したら、預金額の81%の損失を被ることになります。

Ginkoの信用度はすでに低下していますから、そこが発行する債券の取引価格がこれから上昇するとは思えません。Ginko預金者に債券が割り当てられる頃には、GPBの市場価格は現在よりも低下していることが予想されます。

さて、Ginkoは、預金者から預かったお金を、無期限の借金に転換することによって、なんとか延命を図ろうとしています。このやり方については、預金者たちから非難の声が上がるだろうと思います。

ただ、このやり方を不法だとするような法律は存在しませんから、非難されるだけでおわってしまうことになるのかもしれません。

それにしても、このようなスキームを考えだしたのは、いったい誰なのでしょうか。

実は、Ginkoは上記アナウンスの2日前である8月6日に、WSEでGPBの債券分割を行っています。1口の債券を100口に分割しました。分割の理由は、1口の価格を引き下げることによって流動性を高めるとのことでしたが、今回の措置を念頭において、分割を実施したのだと思います。

ひょっとすると、Ginkoが消滅すると困る誰かが、Ginkoに知恵を貸しているのかもしれません。



2007年8月8日水曜日

Ginkoの最近の動き

Ginkoでは、いまだに資金ショートの状態が続いています。

最近まで、預金者一人当たりの1日の引出し限度額が5,000リンデンドルに制限されていたため、預金者の中には、知人に新しい口座を開いてもらい、そこに自分の口座からお金を送金し、知人の口座経由でお金を下ろすことによって限度額をかいくぐろうとした人もいたようです。

このような中、預金者間の公平を期すため、8月3日には、Ginkoは、預金引出しに順番制を取り入れました。

預金者は預金引出しの手続きをしたときに、予約番号を割り当てられます。そしてGinkoは資金があるときに、予約番号の若い順から、預金引き出しのリクエストに応じていくわけです。


私も少額ですがGinkoに預金がありましたので、昨日、引出しに行ってみました。最初に残高の確認をすると次のような表示がでました。


Ginko Financial ATM: Currently processing number 538 of 3511. (L$44,510,485)


引き出しのリクエストが全部で3,511件あり、現在538番目を処理中とのことのようです。

引出しの手続きをすると、私のリクエストは2,687番目との表示がでました。

ところで、538+2,687=3,225にしかなりませんので、上記のATMの表示は正確ではなさそうです。

なお、8月5日には、Ginkoは、1日の引出し限度額を100万リンデンドルに引き上げたほか、普通預金の金利を0.01%から0.1%まで引き上げました。

8月6日には、SECOND LIFE HERALDにGinko関係者のインタビュー記事が掲載されました。

その中で、GinkoのCEOであるNicholas Portocarreroは、Ginkoの債務が約2億リンデンドル(約8,860万円)あることを明らかにしています。また、GinkoのHinoserm Rebus(正確な役職名は不明)によれば、その時点での預金引出しのリクエストの未処理分が約3,000万リンデンドル(約1,330万円)あるとのことでした。

★Ginkoの行く末は?

財務諸表が公開されていないので、正確なところはわかりませんが、これまでの経緯からみて、Ginkoはおそらくは債務超過なのではないでしょうか。そして、預金の払い戻しができない状態なのですから、実質的に破綻していると思います。

ですが、セカンドライフの世界には、破産法がありませんから、「破産」にはなりません。つまり、Ginkoの経営陣がログインし、ATMとウェブサイトが稼動している限り、Ginkoは存続し続けることになります。


ただ、個人的には、現在のような状況が永遠に続くとは思えません。Ginkoを運営するためのインフラのコスト(シムの使用料、サーバの費用)は毎月発生しているはずですし、また、システムを運用するための人件費も発生しているはずです。

ある時点で、これらの費用が払えなくなり、まず、Ginkoのシステムが止まることが考えられます。そして、Ginko関係者がセカンドライフの世界にログインしなくなってしまうかもしれません。

あるいは、セカンドライフの悪いイメージが広がるのを防ぐために、リンデンラボ社が介入してくる可能性もあります。


Ginkoの公式サイトでは、「多数の人々がGinkoを支援してくれており、今回の問題を乗り切る希望を持っている」と述べられていますが、これからGinkoにお金を預けようとする人がいるとは、あまり思えません。

私の預金が払い戻される可能性は、0%に近いのではないでしょうか。

2007年8月7日火曜日

JT FinancialがAVIXを買収

前回のエントリーでは、7月30日にGinko FinancialAllenvest International Exchange(AVIX)を買収することを発表し、その直後、AVIXの親会社である、Allenvest Investment Capital(AIC)が、その買収契約を破棄したとことをお伝えしました。


★JT Financialsによる買収

そのわずか4日後の8月3日、今度はJT FinancialがAVIXを買収し、その経営権を握ったことを発表しました。

ソース:
THE SECONDLIFE NEWSPAPER FINANCE
JT Financial Acquires Control of AVIX

SLNN.COM
JT Financial buys out AVIX stock exchange

JT FinancialとAICの間で取り交わされた契約によれば、AVIXの発行済株式総数のうちの70%にあたる株式を、JT FinancialがAICから800万リンデンドル(約350万円)で買い取り、うち100万リンデンドルを即金で、残りの700万リンデンドルを1年以内にAICに支払うとのこと。

この買収後もAICはAVIXの15%の株式を保有することになりますが、AICそしてAVIXのCEOであったInvestor Allenは、AVIXのCEOの職を辞任しました。

Investor AllenがAVIXを手放した理由ですが、経済的理由およびAICの仕事に専念したいとのこと。AVIXに掲示された告知によれば、セカンドライフ内での仕事が彼の時間を圧迫しているにもかわらず、そこからは収入を得てはおらず、そのため、現実世界の彼の仕事と収入に支障をきたしているとのことでした。

しかし、わずか4日前に開かれた、GinkoによるAVIX買収を発表した集会では、Investor Allenは、今後もAVIXの経営に関わっていく意思を表明していました。それにもかかわらず、今回は、完全にAVIXから手を引く意向を示しています。つまり、経済的理由以上の何かが、株式市場に注いできた彼の情熱を奪ってしまったようです。

一方、JT Financial側は、以前から独自の株式市場を持つことを考えており、そのため今回の買収を進めたとのことです。

今回の買収により、AVIXは名称を変更し、新しい名称はSL Capital Exchangeとなりました。

8月4日には、新しい経営陣が発表になりました。PresidentはLindsay Druart。この人物は、今年5月に倒産したSecond Life Investment Bankを再建した、L&L Rentals and SalesのCEOです。

関連エントリー:
銀行倒産、そして再建・・・Second Life Investment Bank

なお、JT FinancialのCEOはArbitrage Wiseですが、この人物は経営陣の中には名前が入っていません。

8月3日には、この買収を発表するための集会が開かれました。
そのときのチャットログはこちら。

AVIX Buyout By JT Financials Q&A Transcript

集会の参加者からは、今回の買収を批判する声も上がりました。その一人が、AVIXの取締役であるIntlibber Brautiganです。この人物はBrautigan & Tuck Holdings (BNT)のCEOであり、Second Life Exchange Commision(SLEC)のディレクターも務めています。

Intlibber Brautiganは、今回の買収が取締役会に何の相談もなく行われたため、買収は無効だと主張。また、集会後、彼は、今回の買収の有効性に関して、株主による投票を呼びかける告知をAVIXに掲示しました。


セカンドライフの世界には、「会社法」というものは存在せず、したがって、株主の権利も、そして取締役の権利と義務も明確には定められていません。ですから、万が一
株主投票が実現したとしても、今回の買収をなかったことにするのは無理であろうと思います。

★JT Financial

JT Financialは銀行です。正確な設立時期は不明ですが、CEOであるArbitrage Wiseのブログによれば、今年の2月にはすでに営業を行っていたようです。
下が銀行の建物およびその内部の様子です。



私が本社を訪ねたときは、カスタマーサービスの人が2人おり、口座の開き方等を教えてくれました。

現在、普通預金の金利は日利0.15%(年率換算72.8%)、1日当たりの引き出し限度額は10万リンデンドルです。

なお、Arbitrage Wiseは、今年の6月にはセカンドライフのニュースサイトであるSL Reportsを260万リンデンドル(約115万円)で買収したほか、7月にはSL Market Liveという、ブティック風のショッピングサイトをオープンしています。

2007年8月3日金曜日

最近の金融市場の動き

最近、セカンドライフの金融界に関するニュースが相次いでいます。これまでの動きをまとめてお知らせします。

★World Stock Exchange(WSE)

WSEは7月27日に市場を再開しました。休止期間中にWSE3.0という新システムを導入したのですが、システムにバクがあり、市場再開後、取引がまともに行えない状態であったため、上場企業および投資家からは不満の声が上がりました。

そのときの混乱ぶりを伝える記事
The Secondlife Newspaper Finance
WSE 3.0 Debuts to Problems, Frustrated Customers

上場企業のいくつかは、新システムの不具合を非難するアナウンスメントを掲示しました。また、数社が、自社株式のWSEでの上場を廃止し、それらをInternational Stock Exchange(ISE)に移す旨のアナウンスメントを行いました。

ところが、WSEは、WSEを非難するようなアナウンスメントは短時間のうちに削除してしまいます。ですから、これらのアナウンスメントは現在見られません。しかし、そのうちのいくつかは、SL Reportのサイトで見ることができます。

その後、WSEはバグを修正するため、再び市場をクローズし、7月30日頃には市場を再開しました。

WSEはWSE3.0の開始を発表したアナウンスメントの中で、ハッキングの件についても言及しています。それによれば、321万5,916リンデンドル分の預金データが偽造されたとのこと。不正に引き出された資金のうち、一部は取り戻すことができたが、残りについては取り戻せるかどうか不明であるとのことでした。

なお、WSE3.0で注目すべき点としては、World Internet Currency(WICS)という仮想通貨システムとの統合です。WICSはWIC Exchange Pty Limitedが独自に発行した仮想通貨です。このWIC Exchange Pty Limitedという企業は、WSEの親会社であるHope Capitalと関係があるようですが、詳しいことは不明です。

すでにWICSの為替市場であるWIC Exchangeが開設されており、ここでは、WICSと米国ドルの交換、及びWICSとのリンデンドルとの交換が可能となっているようです。

ちなみに、現在の為替レートでは、1米国ドルで0.9615385WICドルが購入可能。また、1WICドルで261.997リンデンドルが購入可能です。

また、WSEのサイト上でもリンデンドルとWICドルとの交換が可能ですので、これで、セカンドライフに1度もログインしなくてもWSEで取引することが可能になったわけです。

このシステムに対する需要が生まれるかどうかは非常に疑問ですが、WICドルという、ひとつの仮想世界に依存しない通貨を作ったことは注目に値すると思います。


★Second Life Exchange Commission(SLEC)

セカンドライフの投資家および事業家たちが集まって、Second Life Exchange Commissionという団体を作っています。設立目的の正確なところは不明ですが、6月19日付けのAllen International Exchange(AVIX)アナウンスメントによれば、健全な投資環境を作るために、AVIXはSLECの策定した規則をAVIXに導入するとのことでした。ですから、証券市場の適正な運営を図るための組織、つまり、証券取引委員会的役割を担うことを目指しているものと思われます。

ところで、AVIXは同アナウンスメントの中で、International Stock Exchange(ISE)もSLECに参加したことを明らかにすると同時に、WSEにも参加を呼びかけています。しかし、現在までのところ、WSEはSLECに参加していません。

WSEのハッキングに関しては、SLECは独自の声明をだしています。その中でSLECは、一般投資家を守るためには、各株式市場から独立した、独自の規制の仕組みが必要であること、また、WSEは投資家からの信頼を取り戻すためにSLECの規制を導入することが必要であると述べています。

なお、SLECはまだ、その規制自体を明らかにしていません。おそらく策定中だと思われます。

周囲からの呼びかけにもかかわらず、WSEがSLECに加わることを拒んでいる理由は、2つ考えられます。

一つ目の理由は、現在のところ、WSEは最大の株式市場ですから、SLECに加わらなくても投資家を惹きつけておけると考えているのかもしれません。上場企業数および市場での取引総額から見ても、WSEと、2番目に大きい株式市場であるAVIXの間には、まだまだかなりの開きがあります。

そしてもうひとつの理由は、WSEの親会社であるHope Capital Ltdの株主構成にあるのではないかと思います。

Hope Capital Ltdの大株主、上位5名とその持ち株比率は現在、次のようになっています。

Nicholas Portocarrero 34.81%
Lukeconnell Vandeverre 21.97%
Third Party 15.12%
Alexis Enfield 6.10%
Shaun Altman 3.87%

Hope Capital LtdのCEOはLukeconnell Vandeverreですが、第1位の株主は彼ではなく、Ginko FinancialのCEOであるNicholas Portocarreroです。

ですから、SLECが策定しようとしている規制のしくみが、株主の権利を大幅に認めるようなものになった場合、Lukeconnell VandeverreはそのCEOとしての地位を失う可能性もあるわけです。


★Ginko Financial

前回Ginkoについてお伝えしたとき、1日あたりの引き出し限度額は10,000リンデンドルでしたが、現在は再び5,000リンデンドルまで引き下げられています。さらに、同社の公式サイトで、Ginkoは、必ずしも5,000リンデンドルの支払いを保証しているわけではなく、銀行に資金がないときには、引き出し可能額が0リンデンドルと表示されることもあるとしています。このことから、Ginkoがまだ資金繰りで苦しんでいることが窺えます。

さて、取り付け騒ぎのあと、Ginkoは皆を驚かせるような動きを見せました。

7月30日20:00(SLT)から集会が開かれ、その席上でGinko FinancialはAVIXを買収するつもりであることを発表しました。

ソース:The Secondlife Newspaper Finance
Angry Investors Scuttle AVIX Acquisition

Ginko Financialと、AVIXの親会社であるAllenvest Investment Capital(AIC)との間で結ばれた契約によれば、GinkoがAVIXの大多数の株式を取得し、AVIXの支配権を握ること、AICも引き続き多数の株式会社を保有し、AICのCEOであるInvetor AllenがAVIXの運営に引き続き関わること、GinkoはAVIXの株式と交換に、現金および非流動性資産(おそらく株式)をAICに渡すとのことでした。

また、Ginkoは自行の価値を1億2,500万リンデンドルであるとし、全株式のうちの4%にあたる株式をAVIXにおけるIPOで売却し、500万リンデンドルを調達する予定であること、またその500万リンデンドルを、AVIXの買収およびGinko本体の資金繰りに充てることをも明らかにしました。

これに対して、投資家たちからは、Ginkoの価値の算定基準が曖昧であること、またGinkoの経営内容が不透明であることを問題視する声が上がり、Ginkoに今までの経営内容を明らかにするように求めました。

ところが、GinkoのCEOであるNicholas Portocarreroが経営情報の開示をする意思はないことをその場で言明したため、投資家たちからは非難の声が相次ぎました。

そのときのチャットログは下記のサイトで見られます。
YOUR2NDPLACE
Chat Log With Investor Allen and Nicholas Portocarrero About IPO/Merger With AVIX

なお、この席上で、Ginko FinancialのCEO、Nicholas Portocarreroは初めて素性を明らかにしました。それによれば、本名はAndre Sanchez、ブラジルのサンパウロ在住です。また、Virtually Blindのインタビュー記事の中で、年齢が20代であることも明らかにしています。

さて、上記の集会にはAllenvest Investment Capital(AIC)のCEOであるInvestor Allenも参加し、GinkoによるAVIXの買収が、両者にとって非常にプラスになることを説明していました。しかし、この集会が終わってからわずか数十分後に、AVIXのサイトにアナウンスメントが掲示され、GinkoのIPOをロールバックにすること、およびGinkoによるAVIXの買収が中止されたことが発表されました。

透明性の確保を標榜し、SLECとも積極的に手を組んできたAVIXのInvestor Allenにとって、経営情報の開示を拒むGinkoの姿勢が容認できないものであったことは容易に想像がつきます。

しかし、Ginkoの保有するATM網と顧客ベースがいくら魅力的なものであったとは言え、今回の買収計画にのったこと自体が、非常に不思議でなりません。Investor Allenは、リアルライフでもプロの投資家ということですから。

この後、7月31日には、GinkoがAVIXに上場していたGinko Perpetual Bonds on AVIX (GPBA)をWSEに移すことを発表しました。

また、同日、Ginkoは普通預金の金利(日利)を0.13%から0.10%に引き下げるとともに、新たに定期預金の発売を行い、さらに、8月2日には、普通預金の金利を0.05%(年利換算、約20%)まで引き下げました。


8月3日15:50追記:Ginkoはさらに普通預金の金利の引き下げを行いました。現在の金利(日利)は0.01%、年利換算で、約3.7%です。

2007年7月29日日曜日

セカンドライフ初(?)の銀行取り付け騒ぎ・・・Ginko Financial

Ginko Financialという銀行が、かなり高い預金金利を支払っていることを知り、それについてわかったことを、このブログで以前お伝えしました。

関連エントリー:セカンドライフ最大の銀行、Ginko・・・その1
http://sheila6225.blogspot.com/2007/03/ginko1.html


★預金引出しの一時停止

その後Ginkoは、ニュースでとりあげられることもなく、平穏無事に営業を続けてきたようです。ところが、7月27日(PDT)朝、預金引出し量が通常よりも増加し、そのためGinkoは資金不足に陥ったらしく、預金引出しを全面的に停止しました。

ソース:
Ginko Financial Suspends then Limits Withdrawals; Head ‘Nicholas Portocarrero’ Calls it a “Bank Run,” Tells Depositors to “Calm Down”
http://virtuallyblind.com/2007/07/27/ginko-financial-suspends-then-limits-withdrawals/

UPDATE 1 - Second Life bank caps withdrawals amid panic
http://secondlife.reuters.com/stories/2007/07/27/ginko-financial-under-fire-caps-withdrawals/

その後、しばらくして、預金引出しは再開されましたが、1日当たりの限度額は5,000リンデンドル(約2,200円)に制限されました。

預金者の1日当たりの引出し限度額は、これまで、30万リンデンドル(約13万3,000円)でした。ですから、かなり厳しい制限になっています。

また、その後も限度額の変更は続き、一時、2万5,000リンデンドルまで引き上げられたものの、また5,000リンデンドルに引き下げられ、現時点(日本時間7月29日15:24)での限度額は1万リンデンドル(約4,400円)となっています。

Ginkoは、その公式サイトで、早急に、引出し限度額を30万リンデンドルに戻すことを明らかにしています。


★預金引出し停止の背景

リンデンラボ社が、ギャンブル禁止の新方針を発表したのは、7月25日(PDT)のことでした。この新方針より、カジノが廃業を余儀なくされ、そのため、地価の低下等、SL経済全体への悪影響が予想されます。

(ギャンブル禁止の新方針については、Soraさんのサイト:SL総合研究所をご参照ください。)

また、当ブログでもお伝えしたとおり、WSEへのハッキングが明らかになったのは、その前日、7月24日のことでした。

そのため、リンデンドル自体への信用度が低くなり、リンデンドルから早めに他の通貨に換えようとした人が、預金引き出しを行なった可能性があります。

また、Ginko自体への信用度がもともと低かったことも、今回の騒動の背景になっていると思います。

Ginkoは現在も0.1%(日利)の預金金利を払い続けています。複利で計算すると、年利に換算して約44%です。これだけの金利を支払うためには、銀行自体が何らかの手段で収益を得る必要がありますが、Ginkoはその経営実態を十分に情報開示してはいません。

ですから、Ginkoの支払能力に日頃から不安を感じていた預金者が、上記2つの出来事をきっかけとして、預金引出しに動いたのかもしれません。


(8月2日追記:上記の金利の数字が間違っておりました。すみません。Ginkoは6月16日に金利を0.09%から0.13%に引き上げました。年利換算では約60.7%になります。)


★おまけ

Ginkoは、宝くじ事業も行なっていました。今回のギャンブル禁止方針により、Ginkoはその事業から撤退することになり、公式サイト上で、その旨の告知と、最後の当選者の発表を行なっています。

その最後の当選者は、Thurston Hallard。

そして、このThurston Hallardは、WSEにハッキングを行なったとされている人物です。「歴史の皮肉」という言葉がまさに当てはまりそうな出来事に感じられました。


2007年7月25日水曜日

World Stock Exchange(WSE)、ハッキングされる

昨日、かなり遅い時間にSLにログインしたところ、SLWatchさんから、WSEがハックされたらしいという情報を頂きました。すぐにWSEのサイトを見てみましたが、公式発表は何もありません。しかし、WSEのグループチャットでは、ハッキングに関するチャットが盛んにやり取りされていました。

情報の発信元は、MDS (Mystik Designs) という上場企業のCEOであるMystik Boucherのブログでした。それによれば、WSEのシステムがハッキングされ、320万リンデンドル(約143万円)が盗まれたとのこと、また盗んだ人物は、MDS の元取締役会会長であるThurston Hallardではないかとのことでした。

また、先週の土曜日(7月21日)から、Mystik Boucher自身のアカウントもリンデンラボ社によって一時的に停止されており、Mystik BoucherとThurston Hallardの間でお金のやり取りがあったことから、それが一時停止の理由になっているのではないかとのことでした。

7月25日には、WSEがハッキングの件について、公式発表を行ないました。主な内容は次のとおりです。

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WSE3.0へのアップデートのための休止期間に入る直前、登録直後のアバターが大量の資金を引き出したことにWSEは気がついた。そのため、直ちに市場をクローズし、調査を開始した。

この件に関わっていたのは、Hope Capital(WSEの親会社)の元従業員のようである。その人物は、ATMのバグの修正作業に携わったことがあり、ATMの通信チャンネルに関する内部情報を知っていた。

この件には複数のアバターが関わっているが、おそらく同一人物によって操作されているものと思われる。さらに詳しい情報は、追って公開する。
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WSE3.0と名づけられた新システムでは、ATMシステムのセキュリティが強化され、また、リンデンラボ社が提供しているRisk API(お金に関するセキュリティシステム)が導入されることになっていました。そのため、アップデート前を狙って、今回のハッキングが行なわれたのではないかということも、WSEは明らかにしています。

現在のところ、WSEは被害額を明らかにしていません。また、休止期間は、当初の予定では7月24日午後12時(PDT)まででしたが、7月25日午後12時(PDT)まで延長されました。

なお、前述のMDS (Mystik Designs) のCEOであるMystik Boucherのアカウント停止措置は、すでに解除されたとのことです。

法律も警察もないSLの世界で、盗まれたお金は取り戻せるのか、また、住民間のトラブルには不介入の姿勢をとっているリンデンラボ社が、今回の件でどのような動きを見せるのか、この事件の今後の展開に大いに興味が湧きます。

2007年7月19日木曜日

セカンドライフ規制強化の動き・・・その後、その1

5月31日にリンデンラボ社はその公式ブログで、児童ポルノ、性的暴力行為、暴力行為、その他露骨に不快感を与えるコンテンツに関する同社の方針を明らかにしました。

(参考エントリー:セカンドライフの規制強化の動き

その後、この規制を巡り、さまざまな動きがありましたのでご紹介します。


★規制に反対する住民の運動

リンデンラボ社は、従来の方針を変更したわけではないと主張していますが、住民側の受け止め方はこれとは異なり、規制強化、すなわち自由な活動の幅を狭めるものとして捉えました。そしてこの方針に抗議して、住民の間で次のようなグループが結成されました。

BDSM is Safe - BDSM is Not Abuse
I am for a FREE Second Life
National Coalition Sexual Freedom
First They came For...
SL Society for Expressive Freedom
Stop the Oppression
Ladies in Self Bondage
The Broadly Offensive
Moral Majority  など。

抗議活動の具体的な内容ですが、上記のI am for a FREE Second Lifeグループの場合は、自分のプロフィールの最初の部分に"I am for a FREE Second Life!" という文言を掲示する、自分の土地に抗議文の書かれた看板を設置するということを行なっています。

さて、6月初旬には、いくつかのグループを取りまとめるような形で、上部組織として、United Protestという団体が結成されました。

同団体のミッション・ステートメントには、次のように書かれています。

... aimed at keeping Second Life free from censorship and keeping it a world with full freedom of expression ...

つまり、検閲の存在しない、表現の自由があるセカンドライフにすることが同団体の使命だそうです。

ところが、設立後間もなく、United Protestの代表者であるJazhara Keonは、pedophile(幼児性愛者)であると自らの性的嗜好を明らかにした人物をグループから除名し、同時にリンデンラボ社にAbuse Report(通報)しました。

このことは同団体の公式ブログのUnited Protest *against* pedophilia(United Protestは小児性愛に反対)という投稿の中で明らかにされました。

これに対しては、幼児性愛という性的嗜好と実際の幼児虐待とは区別されるべきものであり、United Protestの取った措置は間違っているという非難の声がコメント欄に寄せられました。

この非難に対して、Jazhara Keonは次のように答えています。

As United Protest though, we may not be affiliated or associated with pedophilia, simply because it will endanger the whole operation legally.

You state: "...there is a HUGE distinction between pedophilia (legally permissable victimless thought) and child molestation (illegal and prohibited victimising action)..."That, we are fully aware of. I don't judge a pedophile, I don't automatically assume a pedophile is a childmolestor. That would be presumptious, and prejudiced. I do encourage preventive measures though, and hence point out to the proper authorities that they should be aware and vigilant. (In this case Linden Lab, since I do not know who the man is RL).

つまり、グループの中に小児性愛者が混じることは、この活動全体を法的リスクにさらすことになる、また、性的嗜好としての幼児性愛と、実際の行動としての児童虐待の間に大きな区別があることは理解しているが、犯罪の未然防止策として、当局(この場合リンデンラボ社)に通報したとのことです。

組織の安泰のために、危険分子は早めに排除するということなのでしょうが、ドイツのマスコミからエイジプレイのことでつつかれた後、規制強化の方針を明らかにしたリンデンラボ社のやり方と方向性が一緒であるような気がします。

この件で、どのくらいの人々がこの運動から離れたのかは定かではありません。United Protestは、その後も、ロビン・リンデンとの会談、抗議文書への署名活動等を続けています。

なお、Open Letterと題された抗議文書に署名した人の数は、今日現在で419名でした。同団体に属する、BDSM is Safe - BDSM is Not Abuseグループのメンバー数が1,093名、I am for a FREE Second Lifeグループのメンバー数が906名ということから考えると、運動があまり盛り上がってないような気がします。

2007年7月16日月曜日

Woodbury University シムの閉鎖

7月初頭、一つのシムがリンデンラボ社によって閉鎖されました。シムの名前はWoodbury University。

シム管理者であるTizzers Foxchaseに送付した通知の中で、リンデンラボ社は閉鎖の理由を次のように説明しています。

Woodbury University シムは不適切に使用されており、4月16日にその件について通知したが、その後も利用規約に違反する活動が行なわれている。Woodbury University グループのメンバーの多くが、グリッド攻撃、人種差別、不寛容な行動、他の住民に対するハラスメント行為を行い、不適切なスクリプトの使用によりWoodbury Universityシムをクラッシュさせた。従ってリンデンラボ社は直ちに同シムを閉鎖する。(ソース:Second Life Herald

Woodbury Universityはロサンゼルス郊外にある大学です。同大学のMedia, Culture, and Design 学部は2007年春にCO-3714 Virtual Worldsという講座を開設しました。この講座は、インターネット文化を学び、メタバースを通じてそれに触れることを目的としたものです。

Woodbury Universityシム自体は3月にオープンし、Communications学科の広告費からその費用が支払われているとのことなので、この講座と連動して作られたものだと思います。

大学に関係したシムが閉鎖されたと聞いて、私は最初、驚きました。しかし、いろいろな情報をかき集めてみると、閉鎖に至るまでには複雑な事情があったようです。

以下はSecond Life Heraldに掲載された7月8日付の記事からの情報です。情報の発信者は、同シムの元ビジターであるJanelle Kyomoonという人物です。

Woodbury Universityシムには、当初、講堂のほかに学生用のサンドボックスが開設されました。しかし、学生たちはそこを物づくりの場としてではなく、文化的な活動の場として利用し始め、4chan.orgに投稿された画像をサンドボックスに掲示したりしてました。同シムは、一般の人にもサンドボックスを開放していたため、そこに一般の4チャンネラーが集まり始め、やがて、セカンドライフのグリファー集団であるPatriotic Nigraもそこに集まるようになりました。

(今春、John Edwards候補の事務所が襲撃されましたが、それを実行したのがPatriotic Nigraではないかと言われています。ソース

4月初旬、セカンドライフの私設警察組織であるJustice League Unlimitedが、Patriotic Nigraが同シムを乗っ取ったものと思い込み、リンデンラボ社に通報しました。それを受けて、リンデンラボ社は同シムを削除してしまいました。

それを知った大学側はリンデンラボ社に電話で事情を説明し、同シムは再開されました。ただし、建物は削除されてしまい、復元されませんでした。

その後、大学側は、グリーファーたちを排除するために、Woodbury Universityグループを創設し、そのグループメンバーだけに、ビルドとスクリプト作成の権利を与えました。

以上が、同シムの元ビジターからの情報です。

また、Second Life Heraldは、7月3日付でWoodbury UniversityのMedia, Culture, and Design 学部のdeputy director(副学部長)、そして コミュニケーション学科のChair & Associate Professorでもある、Dr. Edward Cliftのインタビュー記事を掲載しています。

その中で、Dr. Cliftは、大学側は土地使用料を6か月分前払いしており、その返金はまだないこと、4月中旬に問題行為についての警告を受けたあとは、4月後半にシムを閉鎖するというthreat(脅迫)の電話メッセージをリンデンラボ社から受け取ったが、その後は何もアクションがなく、またその直後に請求書が送られてきたので、問題ないものだと思っていたことを明らかにしています。また、今回のリンデンラボ社の措置は、SL内に大学を招いておきながら、大学らしい活動をすることを制限したものであり、不合理だとも述べています。

一方、Second Life Hearldは7月10日付の記事で、大学側とグリーファー集団のPatriotic Nigraはつながっており、大学がグリーフィングに関する社会科学的実験をしていたのではないかという疑惑を報じています。

相矛盾する情報が存在し、何が真実なのか掴みにくい状況です。ただこれらの情報から、次のような問題点が浮かび上がってきます。

1. シムのオーナーは、そのシムに存在する人々の行動にどこまで責任を負うべきか? そしてその責任の取り方は?

問題行動を起こしたのは個人です。ですから、その個人のアカウントを停止すればよいと思うのですが、シム自体を削除したということは、リンデンラボ社が、シムのオーナーにその問題行動の責任を負わせたことになります。

もちろん、シムのオーナーたちは、自分のシムが平和に運営されるように、ある程度の責任を負うべきとは思います。しかし、24時間、自分のシムを監視するのは不可能です。突然グリーファーがやってきて、破壊的なスクリプトを使ってシムをクラッシュさせたような場合、それを未然に防ぐのは不可能です。

シムのオーナーも、リンデンラボ社側も、シムが平和に運営されることを望んでいるわけですから、シム閉鎖という強硬手段を取るのではなく、双方が協力して、問題行動を排除していくような方策が取れたのではないかと思います。

2. シム閉鎖に至るまでに、リンデンラボ社側の対応に問題はなかったのか?

1度目の閉鎖は、私設警察組織であるJustice League Unlimitedの通報をきっかけとして行なわれたものですが、リンデンラボ社は、Justice League Unlimitedの言い分を鵜呑みにしてシムを閉鎖してしまったようです。閉鎖する前に、オーナー側の言い分を聞くべきだったのではないでしょうか?

2度目の閉鎖については、情報が十分ではないため、よくわかりません。ただ、Dr. Cliftがインタビューの中で、「4月後半にシムを閉鎖するというthreat(脅迫)の電話メッセージをリンデンラボ社から受け取った」と述べています。彼がthreat(脅迫)という言葉を使用したことから推測して、1度目の閉鎖の時に、何か感情的な行き違いがあったのかもしれません。1度目の閉鎖のとき、大学側は建物を失っており、実質的に損害を被っています。それに対する補償が何もなかったのかもしれません。

3. シムをクラッシュさせたことは、利用規約違反にあたるのか?

2度目の閉鎖の時に、リンデンラボ社は、シムをクラッシュさせたことを理由の一つに挙げています。このシムで、どのようなスクリプトが使用されたのかは定かではありませんが、スクリプトが不適切なのではなく、インフラの方が貧弱なのではないでしょうか。

例えが極端かもしれませんが、非常に壊れやすい商品を提供しておいて、消費者が普通の使い方をしていてその商品を壊してしまった場合に、壊れた責任を消費者に押し付けるようなものかもしれません。

Woodbury Universityシム閉鎖の件については、また新しい情報が出たときにお伝えします。

2007年7月12日木曜日

リンデンラボ社発表の6月のKey Metricsより

セカンドライフの公式ブログで、6月のKey Metricsが発表されましたので、その中からいくつかの項目をピックアップしてご紹介します。

★住民数、ユーザー数、プレミアム会員数の推移

6月末の住民数は772万9,655人でした。住民数というのは個々のアバターの数です。一人のユーザーが複数のアバターを持つ場合あります。

6月末のユーザー数は522万4,582人、 プレミアム会員数は9万4,607 人でした。
プレミアム会員数だけの推移を表わしたグラフは次のとおりです。
対前月比の伸び率は、住民数が12.7%、ユーザー数が19.5%、プレミアム会員数が5.3%でした。対前月比の伸び率を先月と比較すると、住民数とプレミアム会員数が低下、ユーザー数は上昇しています。

★性別比(アカウント登録時に申告した性別)

アカウント数による男女比の推移は次のとおりです。

6月は男性が74.55%、女性が25.45%でした。

利用時間による男女比の推移は次のとおりです。

6月の男女比は男性が57.23%、女性が42.77%でした。

女性が人数では25.45%しか占めていないにもかかわらず、利用時間でみると42.77%も占めているのは、やはりショッピングが、女性の主な楽しみの一つになっているのではないかと思います。

★国別
 
国別のアクティブ・レジデンツ(過去1ヶ月間のログイン時間が1時間を超える住民)の上位10カ国は次のとおりです。
日本のアクティブ・レジデンツの数は2万7,040人。人数では第6位を占めています。前回の9位から上昇しました。利用時間数でも今月は第6位。先月の9位から順位を上げています。 
 
アクティブ・レジデンツの合計は、人数が49万4,981人、利用時間数が1,891万6,338時間でした。対前月比は、人数が2.5%の減少、利用時間数は4.0%増加となっています。
 
★マネーサプライ
6月末のマネーサプライは、30億2,177万3,957 リンデンドル、日本円に換算して 約 13億7,700万円でした。
(1米国ドル=267.6594リンデンドル=121.94円)

対前月比の増加率は6.7%でした。対前月比の増加率は、12月をピークに低下傾向が続いています。

★リンデンドルの為替市場(LindeX) 
 
リンデンドルの為替市場(LindeX)の取引高の推移は次のとおりです。

6月のリンデンドルの為替取引高は18億2,506万5,780リンデンドル、日本円にして約8億2,800万円。対前月比で0.7%の減少となりました。

リンデンラボ社の新規発行売却高は1億6,183万6,659リンデンドル(約7,400万円)。対前月比で23.3%の増加となりました。

前回のエントリーでお伝えしましたように、インワールドでの支出の推計総額は、6月はそれほど伸びていませんでした。また、住民数、プレミアム会員数の伸びも鈍化傾向にあります。このような中で、リンデンラボ社の新規発行売却高が増加したというのは、非常に不思議です。なにか特殊要因があるのかもしれません。

★土地



6月末の土地の合計面積は、712.60平方キロメートル。うち、メインランドが166.59平方キロメートル、プライベートアイランドは546.01平方キロメートルでした。

対前月比の増加率で見ると、全体では9.4%の伸び。メインイランドの増加率が4.1%、プライベートアイランドの増加率が11.1%でした。メインランド、プライベートアイランド共に、対前月比の増加率は、前月より低下しています。