最近、セカンドライフの金融界に関するニュースが相次いでいます。これまでの動きをまとめてお知らせします。
★World Stock Exchange(WSE)
WSEは7月27日に市場を再開しました。休止期間中にWSE3.0という新システムを導入したのですが、システムにバクがあり、市場再開後、取引がまともに行えない状態であったため、上場企業および投資家からは不満の声が上がりました。
そのときの混乱ぶりを伝える記事
The Secondlife Newspaper Finance
WSE 3.0 Debuts to Problems, Frustrated Customers
上場企業のいくつかは、新システムの不具合を非難するアナウンスメントを掲示しました。また、数社が、自社株式のWSEでの上場を廃止し、それらをInternational Stock Exchange(ISE)に移す旨のアナウンスメントを行いました。
ところが、WSEは、WSEを非難するようなアナウンスメントは短時間のうちに削除してしまいます。ですから、これらのアナウンスメントは現在見られません。しかし、そのうちのいくつかは、SL Reportのサイトで見ることができます。
その後、WSEはバグを修正するため、再び市場をクローズし、7月30日頃には市場を再開しました。
WSEはWSE3.0の開始を発表したアナウンスメントの中で、ハッキングの件についても言及しています。それによれば、321万5,916リンデンドル分の預金データが偽造されたとのこと。不正に引き出された資金のうち、一部は取り戻すことができたが、残りについては取り戻せるかどうか不明であるとのことでした。
なお、WSE3.0で注目すべき点としては、World Internet Currency(WICS)という仮想通貨システムとの統合です。WICSはWIC Exchange Pty Limitedが独自に発行した仮想通貨です。このWIC Exchange Pty Limitedという企業は、WSEの親会社であるHope Capitalと関係があるようですが、詳しいことは不明です。
すでにWICSの為替市場であるWIC Exchangeが開設されており、ここでは、WICSと米国ドルの交換、及びWICSとのリンデンドルとの交換が可能となっているようです。
ちなみに、現在の為替レートでは、1米国ドルで0.9615385WICドルが購入可能。また、1WICドルで261.997リンデンドルが購入可能です。
また、WSEのサイト上でもリンデンドルとWICドルとの交換が可能ですので、これで、セカンドライフに1度もログインしなくてもWSEで取引することが可能になったわけです。
このシステムに対する需要が生まれるかどうかは非常に疑問ですが、WICドルという、ひとつの仮想世界に依存しない通貨を作ったことは注目に値すると思います。
★Second Life Exchange Commission(SLEC)
セカンドライフの投資家および事業家たちが集まって、Second Life Exchange Commissionという団体を作っています。設立目的の正確なところは不明ですが、6月19日付けのAllen International Exchange(AVIX)のアナウンスメントによれば、健全な投資環境を作るために、AVIXはSLECの策定した規則をAVIXに導入するとのことでした。ですから、証券市場の適正な運営を図るための組織、つまり、証券取引委員会的役割を担うことを目指しているものと思われます。
ところで、AVIXは同アナウンスメントの中で、International Stock Exchange(ISE)もSLECに参加したことを明らかにすると同時に、WSEにも参加を呼びかけています。しかし、現在までのところ、WSEはSLECに参加していません。
WSEのハッキングに関しては、SLECは独自の声明をだしています。その中でSLECは、一般投資家を守るためには、各株式市場から独立した、独自の規制の仕組みが必要であること、また、WSEは投資家からの信頼を取り戻すためにSLECの規制を導入することが必要であると述べています。
なお、SLECはまだ、その規制自体を明らかにしていません。おそらく策定中だと思われます。
周囲からの呼びかけにもかかわらず、WSEがSLECに加わることを拒んでいる理由は、2つ考えられます。
一つ目の理由は、現在のところ、WSEは最大の株式市場ですから、SLECに加わらなくても投資家を惹きつけておけると考えているのかもしれません。上場企業数および市場での取引総額から見ても、WSEと、2番目に大きい株式市場であるAVIXの間には、まだまだかなりの開きがあります。
そしてもうひとつの理由は、WSEの親会社であるHope Capital Ltdの株主構成にあるのではないかと思います。
Hope Capital Ltdの大株主、上位5名とその持ち株比率は現在、次のようになっています。
Nicholas Portocarrero 34.81%
Lukeconnell Vandeverre 21.97%
Third Party 15.12%
Alexis Enfield 6.10%
Shaun Altman 3.87%
Hope Capital LtdのCEOはLukeconnell Vandeverreですが、第1位の株主は彼ではなく、Ginko FinancialのCEOであるNicholas Portocarreroです。
ですから、SLECが策定しようとしている規制のしくみが、株主の権利を大幅に認めるようなものになった場合、Lukeconnell VandeverreはそのCEOとしての地位を失う可能性もあるわけです。
★Ginko Financial
前回Ginkoについてお伝えしたとき、1日あたりの引き出し限度額は10,000リンデンドルでしたが、現在は再び5,000リンデンドルまで引き下げられています。さらに、同社の公式サイトで、Ginkoは、必ずしも5,000リンデンドルの支払いを保証しているわけではなく、銀行に資金がないときには、引き出し可能額が0リンデンドルと表示されることもあるとしています。このことから、Ginkoがまだ資金繰りで苦しんでいることが窺えます。
さて、取り付け騒ぎのあと、Ginkoは皆を驚かせるような動きを見せました。
7月30日20:00(SLT)から集会が開かれ、その席上でGinko FinancialはAVIXを買収するつもりであることを発表しました。
ソース:The Secondlife Newspaper Finance
Angry Investors Scuttle AVIX Acquisition
Ginko Financialと、AVIXの親会社であるAllenvest Investment Capital(AIC)との間で結ばれた契約によれば、GinkoがAVIXの大多数の株式を取得し、AVIXの支配権を握ること、AICも引き続き多数の株式会社を保有し、AICのCEOであるInvetor AllenがAVIXの運営に引き続き関わること、GinkoはAVIXの株式と交換に、現金および非流動性資産(おそらく株式)をAICに渡すとのことでした。
また、Ginkoは自行の価値を1億2,500万リンデンドルであるとし、全株式のうちの4%にあたる株式をAVIXにおけるIPOで売却し、500万リンデンドルを調達する予定であること、またその500万リンデンドルを、AVIXの買収およびGinko本体の資金繰りに充てることをも明らかにしました。
これに対して、投資家たちからは、Ginkoの価値の算定基準が曖昧であること、またGinkoの経営内容が不透明であることを問題視する声が上がり、Ginkoに今までの経営内容を明らかにするように求めました。
ところが、GinkoのCEOであるNicholas Portocarreroが経営情報の開示をする意思はないことをその場で言明したため、投資家たちからは非難の声が相次ぎました。
そのときのチャットログは下記のサイトで見られます。
YOUR2NDPLACE
Chat Log With Investor Allen and Nicholas Portocarrero About IPO/Merger With AVIX
なお、この席上で、Ginko FinancialのCEO、Nicholas Portocarreroは初めて素性を明らかにしました。それによれば、本名はAndre Sanchez、ブラジルのサンパウロ在住です。また、Virtually Blindのインタビュー記事の中で、年齢が20代であることも明らかにしています。
さて、上記の集会にはAllenvest Investment Capital(AIC)のCEOであるInvestor Allenも参加し、GinkoによるAVIXの買収が、両者にとって非常にプラスになることを説明していました。しかし、この集会が終わってからわずか数十分後に、AVIXのサイトにアナウンスメントが掲示され、GinkoのIPOをロールバックにすること、およびGinkoによるAVIXの買収が中止されたことが発表されました。
透明性の確保を標榜し、SLECとも積極的に手を組んできたAVIXのInvestor Allenにとって、経営情報の開示を拒むGinkoの姿勢が容認できないものであったことは容易に想像がつきます。
しかし、Ginkoの保有するATM網と顧客ベースがいくら魅力的なものであったとは言え、今回の買収計画にのったこと自体が、非常に不思議でなりません。Investor Allenは、リアルライフでもプロの投資家ということですから。
この後、7月31日には、GinkoがAVIXに上場していたGinko Perpetual Bonds on AVIX (GPBA)をWSEに移すことを発表しました。
また、同日、Ginkoは普通預金の金利(日利)を0.13%から0.10%に引き下げるとともに、新たに定期預金の発売を行い、さらに、8月2日には、普通預金の金利を0.05%(年利換算、約20%)まで引き下げました。
8月3日15:50追記:Ginkoはさらに普通預金の金利の引き下げを行いました。現在の金利(日利)は0.01%、年利換算で、約3.7%です。
2007年8月3日金曜日
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4 件のコメント:
Nicholas Portocarreroが20代と聞いて,昔の「光クラブ事件」をちょっと思い出しました。たしか20代の学生が高利で金を集めて,更に高利で金を貸して,華々しく事業を展開するのですが,最後には摘発されて自殺するという悲劇的な結末でした。
日本では出資等取締法というのがありますが,現実通貨ではないので,仮に日本だとしてもこれが適用されるかどうかは問題があります。
ブラジルではどうなんでしょうか?
いずれにしても,GINKOの動向は目が離せませんね。
「光クラブ事件」・・・名前だけは聞いたことがありました。WSEのCEOも、確かまだ20代です。
>ブラジルではどうなんでしょうか?
下記の記事を見ると、日本では、仮想通貨もそのうち規制の対象になりそうですね。
経済産業省、ポイント商法のルール化を模索へ
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2007/01/post_1814.html
>いずれにしても,GINKOの動向は目が離せませんね。
引き出しができないことがあるとのことですが、法律がないから、結局、CEOがSLの世界に顔を出し続ける限り、Ginkoはずーっと存続状態になってしまうのかなとも思います。でも、従業員が逃げ出すかもしれませんね。
もし,GINKOが倒れて,被害者が出るようなことになれば,集団訴訟が提起されるかもしれません。現にそのような動きがあるようです。
形としては,リンデンラボに対して,預金者の保護を怠った責任を問うような訴訟となることを予想しています。
これは,ブラジルでNicholasを特定して訴えることは困難だろうと思うからです。
明かした実名も本当かどうかわからないですしね。
>形としては,リンデンラボに対して,預金者の保護を怠った責任を問うような訴訟となることを予想しています。
もし、LL社の責任が認められるようなことになったら、LL社はますます、規制を強めるようなことになるかもしれませんね。
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