2007年8月22日水曜日

最近の金融市場・・・World Stock Exchange(WSE)

★World Internet Currency(WICS)との統合による問題

8月3日のエントリで、World Internet Currency(WICS)という新しい仮想通貨がつくられ、そのWICドルとリンデンドルおよび米国ドルとの交換が可能になったこと、またその為替市場であるWIC Exchangeが開設されたことを紹介しました。

また、そのときに紹介しそこなったのですが、現在、WSEにおける株式取引はWICドル建てでもできるようになっています。

つまり、WICドルという通貨を介在させることにより、セカンドワールド外の投資家をWSEに呼び込もうというWSEの戦略です。

しかし、このWICドルの導入によって、セカンドライフの既存の投資家が不利益を被るケースも出てきました。なぜなら、WSEで株式を売買するときに、どの通貨で取引するかの選択権が売り手側にはないからです。

WSEで株式を売却するときには指値で売りに出します。例えば、投資家が手持ちの一株を10リンデンドルで売りたい場合には、10リンデンドルと指定して買い手がつくのを待つわけです。

ところが、WICドルの導入により、買い手側は、指値である10リンデンドルに相当するWICドル、つまり約0.0377WICドルでもその株が買えるようになりました。どちらの通貨で支払うかは、買い手側が決めることになります。

その結果、場合によっては、売り手側は自分の株式が売れたときに、10リンデンドルではなく、0.0377WICドルを手にすることもあるわけです。

WICドルはWSE以外の場所では使えませんので、住民の多くはWICドルをリンデンドルに両替することを考えると思います。けれどもその両替の過程で、コストが発生します。

WIC Exchangeの現在の為替レートは次のとおりです。

リンデンドル→WICドル   1WICドル=295.57リンデンドル
WICドル→リンデンドル   1WICドル=265.47リンデンドル

WIC Exchangeは、対リンデンドルの為替手数料を明示していませんが、295.57リンデンドルと265.47リンデンドルの差額である30.1リンデンドルの半分、すなわち15.05リンデンドルが、実質的に片道の為替手数料にあたると思います。

今回のWICドルの導入は、セカンドライフの投資家からみれば、欲しくもないWICドルを受け取らされる可能性があり、おまけにそれをリンデンドルに交換するときにコストが発生するわけですから、システムの改悪です。

ところで、WICドルの為替市場であるWIC Exchangeでは、最近、対リンデンドルおよび対米国ドルの為替の他に、対ユーロおよび対オーストラリアドルの為替も始めました。さまざまな通貨を扱うことで利便性を高め、世界中からの投資家をWSEに呼び込もうとの戦略のようです。

また、オーストラリアドルに関しては、近い将来、WIC Exchangeの口座とオーストラリアの銀行口座との間の直接送金を可能にし、オーストラリアの投資家たちにアピールするつもりのようです。

しかし、上述のように、WICドルの導入は、既存の投資家たちにとっては不利益を招きかねないシステムになってしまっています。ですから、新規の投資家たちがWSEに集まる前に、既存の投資家たちがWSEから離れていってしまう可能性も大いにあると思います。

日本人ユーザの中で、Ginkoの倒産により、預金の代償としてGinko Perpetual Bond(GPB)を受け取った方もいらっしゃることと思います。(私のその一人ですが・・・。)WSEでGPBを売却する場合には、上記の点にどうかご留意ください。


★Scripting by Joseph(SBJ)倒産事件

WSEの上場会社であるScripting by Joseph(SBJ)が、8月5日、倒産のアナウンスメントをWSEのサイト上に掲示しました。

WSEは上場廃止になった企業のアナウンスメントをすべて消してしまいますので、そのアナウンスメントを、現在、直接見ることはできませんが、SL Reportsがそれを報じていますので、そこで見ることができます。

それによれば、同社は業績不振のため利益が出せず、倒産したとのこと。また残った資金を、翌日、株主に分配するとのことでした。

セカンドライフの世界では、業績不振からなのか、または最初から騙すつもりだったのか理由はいろいろあると思いますが、企業経営者が株主たちに何も告げずに、突然消えてしまうケースが今までに何件もありました。ですから、同社のケースは、なかなか良心的だと思いました。

ところが、WSEは、8月5日に倒産宣言が出されたにもかかわらず、すぐにはSBJ銘柄を取引停止にはしませんでした。10日近く後の8月16日になってから、やっと上場廃止のアナウンスメントを行いました。

その間、8月7日には、The Second Life Exchange Commission(SLEC)という、独立した証券取引委員会のような組織が、WSEの対応を非難する声明を出しています。(WSEはSLECには加盟していません。SLECについての関連エントリはこちら

また、その間、実際にWSEを何度か見てみたのですが、SBJ銘柄の取引が成立していました。

倒産宣言が出されたにもかかわらず、すぐに対応しなかったWSEの姿勢には大いに疑問を覚えます。そして、倒産宣言後にその株式を購入した投資家たちは、いったい何を考えていたのでしょうか・・・。

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