2007年7月16日月曜日

Woodbury University シムの閉鎖

7月初頭、一つのシムがリンデンラボ社によって閉鎖されました。シムの名前はWoodbury University。

シム管理者であるTizzers Foxchaseに送付した通知の中で、リンデンラボ社は閉鎖の理由を次のように説明しています。

Woodbury University シムは不適切に使用されており、4月16日にその件について通知したが、その後も利用規約に違反する活動が行なわれている。Woodbury University グループのメンバーの多くが、グリッド攻撃、人種差別、不寛容な行動、他の住民に対するハラスメント行為を行い、不適切なスクリプトの使用によりWoodbury Universityシムをクラッシュさせた。従ってリンデンラボ社は直ちに同シムを閉鎖する。(ソース:Second Life Herald

Woodbury Universityはロサンゼルス郊外にある大学です。同大学のMedia, Culture, and Design 学部は2007年春にCO-3714 Virtual Worldsという講座を開設しました。この講座は、インターネット文化を学び、メタバースを通じてそれに触れることを目的としたものです。

Woodbury Universityシム自体は3月にオープンし、Communications学科の広告費からその費用が支払われているとのことなので、この講座と連動して作られたものだと思います。

大学に関係したシムが閉鎖されたと聞いて、私は最初、驚きました。しかし、いろいろな情報をかき集めてみると、閉鎖に至るまでには複雑な事情があったようです。

以下はSecond Life Heraldに掲載された7月8日付の記事からの情報です。情報の発信者は、同シムの元ビジターであるJanelle Kyomoonという人物です。

Woodbury Universityシムには、当初、講堂のほかに学生用のサンドボックスが開設されました。しかし、学生たちはそこを物づくりの場としてではなく、文化的な活動の場として利用し始め、4chan.orgに投稿された画像をサンドボックスに掲示したりしてました。同シムは、一般の人にもサンドボックスを開放していたため、そこに一般の4チャンネラーが集まり始め、やがて、セカンドライフのグリファー集団であるPatriotic Nigraもそこに集まるようになりました。

(今春、John Edwards候補の事務所が襲撃されましたが、それを実行したのがPatriotic Nigraではないかと言われています。ソース

4月初旬、セカンドライフの私設警察組織であるJustice League Unlimitedが、Patriotic Nigraが同シムを乗っ取ったものと思い込み、リンデンラボ社に通報しました。それを受けて、リンデンラボ社は同シムを削除してしまいました。

それを知った大学側はリンデンラボ社に電話で事情を説明し、同シムは再開されました。ただし、建物は削除されてしまい、復元されませんでした。

その後、大学側は、グリーファーたちを排除するために、Woodbury Universityグループを創設し、そのグループメンバーだけに、ビルドとスクリプト作成の権利を与えました。

以上が、同シムの元ビジターからの情報です。

また、Second Life Heraldは、7月3日付でWoodbury UniversityのMedia, Culture, and Design 学部のdeputy director(副学部長)、そして コミュニケーション学科のChair & Associate Professorでもある、Dr. Edward Cliftのインタビュー記事を掲載しています。

その中で、Dr. Cliftは、大学側は土地使用料を6か月分前払いしており、その返金はまだないこと、4月中旬に問題行為についての警告を受けたあとは、4月後半にシムを閉鎖するというthreat(脅迫)の電話メッセージをリンデンラボ社から受け取ったが、その後は何もアクションがなく、またその直後に請求書が送られてきたので、問題ないものだと思っていたことを明らかにしています。また、今回のリンデンラボ社の措置は、SL内に大学を招いておきながら、大学らしい活動をすることを制限したものであり、不合理だとも述べています。

一方、Second Life Hearldは7月10日付の記事で、大学側とグリーファー集団のPatriotic Nigraはつながっており、大学がグリーフィングに関する社会科学的実験をしていたのではないかという疑惑を報じています。

相矛盾する情報が存在し、何が真実なのか掴みにくい状況です。ただこれらの情報から、次のような問題点が浮かび上がってきます。

1. シムのオーナーは、そのシムに存在する人々の行動にどこまで責任を負うべきか? そしてその責任の取り方は?

問題行動を起こしたのは個人です。ですから、その個人のアカウントを停止すればよいと思うのですが、シム自体を削除したということは、リンデンラボ社が、シムのオーナーにその問題行動の責任を負わせたことになります。

もちろん、シムのオーナーたちは、自分のシムが平和に運営されるように、ある程度の責任を負うべきとは思います。しかし、24時間、自分のシムを監視するのは不可能です。突然グリーファーがやってきて、破壊的なスクリプトを使ってシムをクラッシュさせたような場合、それを未然に防ぐのは不可能です。

シムのオーナーも、リンデンラボ社側も、シムが平和に運営されることを望んでいるわけですから、シム閉鎖という強硬手段を取るのではなく、双方が協力して、問題行動を排除していくような方策が取れたのではないかと思います。

2. シム閉鎖に至るまでに、リンデンラボ社側の対応に問題はなかったのか?

1度目の閉鎖は、私設警察組織であるJustice League Unlimitedの通報をきっかけとして行なわれたものですが、リンデンラボ社は、Justice League Unlimitedの言い分を鵜呑みにしてシムを閉鎖してしまったようです。閉鎖する前に、オーナー側の言い分を聞くべきだったのではないでしょうか?

2度目の閉鎖については、情報が十分ではないため、よくわかりません。ただ、Dr. Cliftがインタビューの中で、「4月後半にシムを閉鎖するというthreat(脅迫)の電話メッセージをリンデンラボ社から受け取った」と述べています。彼がthreat(脅迫)という言葉を使用したことから推測して、1度目の閉鎖の時に、何か感情的な行き違いがあったのかもしれません。1度目の閉鎖のとき、大学側は建物を失っており、実質的に損害を被っています。それに対する補償が何もなかったのかもしれません。

3. シムをクラッシュさせたことは、利用規約違反にあたるのか?

2度目の閉鎖の時に、リンデンラボ社は、シムをクラッシュさせたことを理由の一つに挙げています。このシムで、どのようなスクリプトが使用されたのかは定かではありませんが、スクリプトが不適切なのではなく、インフラの方が貧弱なのではないでしょうか。

例えが極端かもしれませんが、非常に壊れやすい商品を提供しておいて、消費者が普通の使い方をしていてその商品を壊してしまった場合に、壊れた責任を消費者に押し付けるようなものかもしれません。

Woodbury Universityシム閉鎖の件については、また新しい情報が出たときにお伝えします。

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

建物が消えたのは作成者がグリーファーのひとりだと認識されてアカウント削除されたためという記事もありましたね。そのあたりで大学とSIM運営に深くかかわっている人間が関連している=SIM自体もコントロールができていないという判断をされたのではという。

単純にクラッシュうんぬんではなく、関連する人やシム運営のコントロールができていない、もしくはするべきことをしていないとみなされたのが原因なのかなと私は理解しました。

もちろんどこまでが「するべきこと」なのかという線引き問題は残るわけですが…。

sheila6225 Allen さんのコメント...

>建物が消えたのは作成者がグリーファーのひとりだと認識されてアカウント削除されたためという記事もありましたね。

その記事は見逃していました。ソースを教えていただければありがたく存じます。

>関連する人やシム運営のコントロールができていない、もしくはするべきことをしていないとみなされたのが原因なのかなと私は理解しました。

それはそう思います。
ただ、リンデンラボ社のその後の対応がかなり一方的なように思いました。
もっと具体的な理由の開示、シムオーナーに弁明の機会を与えることなどを、シム削除の前にやるべきではなかったかと思いました。

匿名 さんのコメント...

すいませんソースはたしか Second Life Heraldだったと思うのですが見つけることができませんでした。

後半部分については(http://www.secondlifeherald.com/slh/2007/07/woodbury-univer.html)の記事中のLLからのメール抜粋が該当すると思います。

このメールの時点でLLとしてはWoodburyの管理権限を持つものが問題にかかわっていること、望ましくないスクリプトのテストをしてシムを落としたこと(他のシムにも同じことをする可能性があるという考慮?)を指摘して、誤認識であれば連絡をくれということを述べています。

やりとりは 4月のころからされていたようですので弁明の機会はなくはなかったのではないかとも思いますが…。

いずれにしろ推測・伝聞なのでなんともいえませんね…。

sheila6225 Allen さんのコメント...

nockさま、ご回答ありがとうございました。
たしか、Dr.Cliftのインタビュー記事で、最初に建物を作ったときに、グリーファーのメンバーもそれに参加していたということを述べてましたので、彼らのアカウントが停止されたときに、一緒に建物も消えてしまう可能性はあると思いました。

>いずれにしろ推測・伝聞なのでなんともいえませんね…。

ですね。HeraldのProkofy Nevaさんが、今後、どこまで真相に迫ってくれるかですね。