2007年8月28日火曜日

Philip Rosedaleのロイターとインタビューより

リンデンラボ社のCEOであるPhilip Rosedaleがロイターとのインタビューで、なかなか興味深いことを話していましたので、重要だと思われるところを拾ってみました。

1. Linden is roughly profitable.

「リンデンラボ社は大雑把に言って儲かっている。」

リンデンラボ社が倒産でもしたら、リンデンドルは一気に無価値になってしまう可能性があります。また、セカンドライフ内の各個人の資産が失われてしまう可能性もあります。ですから、ユーザとしては、リンデンラボ社の財務状況が大いに気になるところです。

公開企業ではないので、財務状況の情報開示をする必要がなく、本当のことを言っているのかどうか疑問は残りますが・・・。

2. By far the largest source of income to Linden Lab is the sales and the tier fees.

「リンデンラボ社の最大の収入源は(土地の)販売と土地使用料である。」

私がいつもチェックしている、On Off and beyondというブログに、リンデンラボ社の収入源別に総収入を推計をしたグラフが掲載されています。上記のPhilip Rosedaleの言葉は、その推計のグラフと一致するようです。
ソース:「On Off and beyond [渡辺千賀]テクノロジー・ベンチャー・シリコンバレーの暮らし」より転載


3. 土地ビジネスが最大の収入源になっているにもかかわらず、サーバのオープンソース化を目指していることを尋ねられて

We believe we can reasonably make money — barely make money — by just charging access to the system.

「システムへのアクセス料金をとることで、まあまあ金儲けができると思っている。」(barelyの部分は、「かろうじて、どうにかこうにか」の意味ですが、ここでの意味が良くわからないので省略してます。どなたかご教示を。)

リンデンラボ社は、サーバのオープンソース化後、各企業や各個人が独自に設置したサーバを、もし、希望があればリンデンラボ社のシステムと接続し、その接続料を取るとのことです。

人々に何かを売りたいと考えている企業であれば、オープンソースによって独自に設置した自社サーバを、ユーザが多数いるところ、すなわちリンデンラボ社のサーバのネットワークとリンクしたいと考えるであろうということも、Philip Rosedaleは述べています。

ところで、最近、リンデンラボ社は、メインランドの土地を大量に新規造成し、それをオークションで売り出しています。その結果、メインランドの地価がかなり下がりました。

Second Citizenというフォーラムの土地に関するスレッドを見てみると、6月中旬には、いちばん安い土地の土地単価が1平方メートル当たり10リンデンドル前後でした。しかし、今日、8月28日には、それが6.1リンデンドルまで低下しています。

つまり、地価を大幅に引き下げることによって、アクティブユーザ数を増加させ(注)、十分なユーザ数を確保した上で、サーバをオープン化する戦略だと思われます。
(注:ユーザが土地を購入すれば、セカンドライフにコミットする度合いが高くなると考えられます。)


4. システムの信頼性について

We need to get to the place where Second Life is as reliable running on your PC or a Mac as an Internet browser.

「セカンドライフ(のシステム)の信頼性が、インターネット・ブラウザ並みに高まる必要がある。」

この発言にも関連しますが、8月24日から26日にかけて、シカゴでSecond Life Community Convention 07というイベントが開かれ、その基調講演で、Philip Rosedaleは最初に、システムの信頼性が低いことを謝りました。

バグの修正と新機能の導入とのどちらが重要かとのロイターの質問に対しては、バグの修正と答えています。ボイスの導入が済んだので、他に必要不可欠な重要機能はないと考えているとのことです。

なお、上述の基調講演の中で、開発のスピードを重視したために信頼性がおろそかになったことを認めており、また、その後規模が拡大し、いまは転換点にいるとも述べています。

5. リンデンラボ社の株式を公開するつもりがあるかどうかを尋ねられて

No. We’re profitable now and sustainable, ...

「ない。リンデンラボ社は今、利益が出ているし、このままやっていける。」

6. 現実社会の法とセカンドライフ内の規制の関係について

将来、ユーザの国籍によって、そのアバターのセカンドライフ内での行動が規制されるようになるかもしれないとのことです。

7. 今後6ヶ月間の最重要課題はと尋ねられて

Quality. We’re at a place where we’ve demonstrated that the virtual world can exist. Now we need to make it high quality so it does continuously support the activities and desires of the people who are using it.

「クオリティ。リンデンラボ社は、ヴァーチャルワールドが存在し得るということを(世間に対して)すでに示した。今は、ユーザの活動と願望に常に応えられるように、このヴァーチャルワールドのクオリティを高めることが必要だ。」


このインタビューを読んだ感想ですが、リンデンラボ社はユーザ重視の方向に変わってきたようです。

オープンソース化後の戦略を睨んでのことかもしれませんが、最近の登録者数の伸び率の鈍化、また、おそらく定着率が低いことに危機感を抱いたのかもしれません。

ところで、リンデンラボ社は最近、日本でPR担当の企業を雇ったそうです。ユーザ重視の姿勢に変わってきたのであれば、上述のSLCCでの基調講演の翻訳文ぐらいは出してもらえないのかなとも思います。やはり、リンデンラボ社のCEOが何を考えているのかを知ることは、セカンドライフで何かをしようとするときに、とても重要なことだと思いますので。

最近の金融市場・・・International Stock Exchange(ISE)、SL Capital Exchange(SL CapEx)

8月3日のエントリでもお伝えしましたように、7月下旬にWorld Stock Exchange(WSE)は新システムであるWE3.0を稼動させました。しかしそのシステムにかなりの不具合があり、まともに取引が行えない状態であったため、それに不満を抱いた上場企業9社がWSEから他の株式市場に、自社銘柄を移してしまいました。

そして、そのうちの8社の移動先がInternational Stock Exchange(ISE)でした。


★ISEがオークションに

ISEは、セカンドライフにある3つの株式市場の中では一番規模の小さな市場であり、8社が移ってくる前は、1日の取引高が10万リンデンドルに満たないことがほとんどでした。しかし8社が移ったことで取引高が大幅に増加しました。

そのような中、8月19日にISEのCEOであるCocky Daggerが、ISEをオークションによって売却することを発表しました。入札締め切りは8月21日。ただしオークションといっても最高額入札者が必ずしも購入できるわけではなく、Cocky Daggerを除く、ISEの株主たちの投票による承認が必要とのことでした。

売却の理由は、"I am spreading myself too thin with the ISE. "、つまり、ISE運営に関わる仕事量が多すぎて、十分に手が回らないからだそうです。

なお、売却対象となったISEの内容は次のとおりです。


資産 (単位:リンデンドル)
-----------------------------------------
現金 160万

預金 78万
有価証券 18万
ホストサーバのレンタルの権利4か月分
ソフトウェア-ウェッブサイト、ATMのコード、インワールドの取引システム、ティッカーのコード
土地 2,500平方メートル
広告の前払い費用 3万5000


負債
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預り金 200万

不祥事に対応するための保険としての積立金 17万6000


当月の予想収支
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収入 35万

費用 10万

上記の予想収支を見ると、費用の中にまともな人件費が含まれてるとは思えません。どうも、今までCocky Daggerが無償で運営していたようです。もちろん、利益は株主に配当されますので、大株主であるCocky Daggerはその利益の大部分を受け取っていたでしょう。しかし、上記の予想収支から算出される利益は25万リンデンドル、日本円で約11万円。運営にかかる手間と時間を考えると、割りに合わない金額だったのかもしれません。


★ISE版Rule 144の実施とその反応

オークション実施の発表後、しばらくしてから、Cocky Daggerはさらに、ISE版Rule 144を実施すると発表しました。

ISE版Rule 144とは米国証券取引法第144条の趣旨を受け継いだもので、一般投資家保護のため、上場企業のCEO等が保有する株式の取引を規制するものです。

その具体的な内容ですが、もし、あるアバターがそのIPアドレスから、上場企業のCEOのアルト(注)であると判明した場合には、そのCEOとアルトの過去10日間の取引を公表するとのことです。

(注:セカンドライフでは一人の人が複数のアバターを持つことが可能です。その場合、メインのアバター以外のアバターをアルトと呼んでいます。)

つまり、このRule 144を実施することにより、インサイダー取引を防止するとともに、アルトを使った不正な株価操作を防止しようというわけです。

Cocky Daggerは、Rule 144の実施が投資家たちのからの強い要請によるものであることも明らかにしています。

ところが、このRule 144実施の発表後、上場企業のうちの6社がISEから離脱し、新しい株式市場であるVSTEXに移る意思を表明しました。ただし、これら6社のうち、離脱の理由をRule 144の実施にあるとしたところは1社もありません。ある企業は、オークションの方法に同意できないことを理由にし、またある企業は離脱の理由を一切明らかにしませんでした。

ところで、この6社は、7月末から8月初めにかけてWSEからISEに移動してきた8社のうちの6社です。ですから、ISEには約3週間上場しただけで、別の株式市場に移ることになったわけです。

オークションの締切日である8月21日には、ISEの集会が開かれました。その席上でCocky Daggerは、6社の離脱によって状況が大幅に変化したことを理由に、オークションの中止を発表し、またCEOとして今までどおり運営を続けることを明らかにしました。

結局ISEからは、上場企業・IPO企業併せて19社のうち6社が離脱しました。そのためその後、ISEの取引額は大幅に落ち込み、取引額が10万リンデンドルに届かない日々が続いています。

Cocky Daggerは、株式市場の透明化に努めている点でかなり評価されているようですが、ISEの規模自体が小さいため、このまま存続できるのかどうかが心配です。

なお、離脱した6社の移動先であるVSTEXですが、イタリアの会社が運営しているらしく、また同サイトによれば、セカンドライフ初の、コミュニティベースの株式市場だということです。サイトを見ると、同市場の運営を行っているVstex Companyが8月5日にIPOを開始したとのことなので、その時がVSTEXのオープンだと思われます。

またこの原稿を作成している時点で、すでにISEから離脱した6社のうちの5社がこの市場に上場していました。(残りの1社の動向は不明です。)

VSTEXに上場したのは次の5社です。

AVC - Atlas Venture Capital
CGI - Countless Galaxies
BHE - Bart Heart Estates
VHI - Valentine Heart Inc.
KFM - Kristatos Fashion Mall

ところで、このVSTEXの件については、全然情報が流れてきていませんでしたので、正直驚きました。イタリアの会社が運営しているとのことなので、その辺が原因なのかもしれません。このVSTEXについては、後日カバーするつもりです。


★SL Capital Exchange(SL CapEx)が預金利率の引き下げを発表

SL CapExにある各投資家の口座が、銀行であるJT Financialの口座と統合され、その結果、口座の現金残高に日利0.15%(年利換算72%)という高い金利が適用されることになったことを、以前のエントリでお伝えしました。

しかし、8月23日、SL CapEX/JT Financialは、その金利を日利0.12%まで引き下げることを発表しました。理由は、預金量が最近、急に増大したからとのこと。金利改定実施日は9月3日です。

また、同社は長期戦略にも言及し、金利を年末までに0.1%まで引き下げること、その一方で少額預金者優遇の金利を設定することを明らかにしています。

さて、預金量の増大に合わせて、預金金利を引き下げたとのことですが、それでも改定後の金利を年利換算すると54%にもなります。SL CapEX/JT Financialに預金をされる方は、この点に注意が必要だと思います。

2007年8月22日水曜日

最近の金融市場・・・World Stock Exchange(WSE)

★World Internet Currency(WICS)との統合による問題

8月3日のエントリで、World Internet Currency(WICS)という新しい仮想通貨がつくられ、そのWICドルとリンデンドルおよび米国ドルとの交換が可能になったこと、またその為替市場であるWIC Exchangeが開設されたことを紹介しました。

また、そのときに紹介しそこなったのですが、現在、WSEにおける株式取引はWICドル建てでもできるようになっています。

つまり、WICドルという通貨を介在させることにより、セカンドワールド外の投資家をWSEに呼び込もうというWSEの戦略です。

しかし、このWICドルの導入によって、セカンドライフの既存の投資家が不利益を被るケースも出てきました。なぜなら、WSEで株式を売買するときに、どの通貨で取引するかの選択権が売り手側にはないからです。

WSEで株式を売却するときには指値で売りに出します。例えば、投資家が手持ちの一株を10リンデンドルで売りたい場合には、10リンデンドルと指定して買い手がつくのを待つわけです。

ところが、WICドルの導入により、買い手側は、指値である10リンデンドルに相当するWICドル、つまり約0.0377WICドルでもその株が買えるようになりました。どちらの通貨で支払うかは、買い手側が決めることになります。

その結果、場合によっては、売り手側は自分の株式が売れたときに、10リンデンドルではなく、0.0377WICドルを手にすることもあるわけです。

WICドルはWSE以外の場所では使えませんので、住民の多くはWICドルをリンデンドルに両替することを考えると思います。けれどもその両替の過程で、コストが発生します。

WIC Exchangeの現在の為替レートは次のとおりです。

リンデンドル→WICドル   1WICドル=295.57リンデンドル
WICドル→リンデンドル   1WICドル=265.47リンデンドル

WIC Exchangeは、対リンデンドルの為替手数料を明示していませんが、295.57リンデンドルと265.47リンデンドルの差額である30.1リンデンドルの半分、すなわち15.05リンデンドルが、実質的に片道の為替手数料にあたると思います。

今回のWICドルの導入は、セカンドライフの投資家からみれば、欲しくもないWICドルを受け取らされる可能性があり、おまけにそれをリンデンドルに交換するときにコストが発生するわけですから、システムの改悪です。

ところで、WICドルの為替市場であるWIC Exchangeでは、最近、対リンデンドルおよび対米国ドルの為替の他に、対ユーロおよび対オーストラリアドルの為替も始めました。さまざまな通貨を扱うことで利便性を高め、世界中からの投資家をWSEに呼び込もうとの戦略のようです。

また、オーストラリアドルに関しては、近い将来、WIC Exchangeの口座とオーストラリアの銀行口座との間の直接送金を可能にし、オーストラリアの投資家たちにアピールするつもりのようです。

しかし、上述のように、WICドルの導入は、既存の投資家たちにとっては不利益を招きかねないシステムになってしまっています。ですから、新規の投資家たちがWSEに集まる前に、既存の投資家たちがWSEから離れていってしまう可能性も大いにあると思います。

日本人ユーザの中で、Ginkoの倒産により、預金の代償としてGinko Perpetual Bond(GPB)を受け取った方もいらっしゃることと思います。(私のその一人ですが・・・。)WSEでGPBを売却する場合には、上記の点にどうかご留意ください。


★Scripting by Joseph(SBJ)倒産事件

WSEの上場会社であるScripting by Joseph(SBJ)が、8月5日、倒産のアナウンスメントをWSEのサイト上に掲示しました。

WSEは上場廃止になった企業のアナウンスメントをすべて消してしまいますので、そのアナウンスメントを、現在、直接見ることはできませんが、SL Reportsがそれを報じていますので、そこで見ることができます。

それによれば、同社は業績不振のため利益が出せず、倒産したとのこと。また残った資金を、翌日、株主に分配するとのことでした。

セカンドライフの世界では、業績不振からなのか、または最初から騙すつもりだったのか理由はいろいろあると思いますが、企業経営者が株主たちに何も告げずに、突然消えてしまうケースが今までに何件もありました。ですから、同社のケースは、なかなか良心的だと思いました。

ところが、WSEは、8月5日に倒産宣言が出されたにもかかわらず、すぐにはSBJ銘柄を取引停止にはしませんでした。10日近く後の8月16日になってから、やっと上場廃止のアナウンスメントを行いました。

その間、8月7日には、The Second Life Exchange Commission(SLEC)という、独立した証券取引委員会のような組織が、WSEの対応を非難する声明を出しています。(WSEはSLECには加盟していません。SLECについての関連エントリはこちら

また、その間、実際にWSEを何度か見てみたのですが、SBJ銘柄の取引が成立していました。

倒産宣言が出されたにもかかわらず、すぐに対応しなかったWSEの姿勢には大いに疑問を覚えます。そして、倒産宣言後にその株式を購入した投資家たちは、いったい何を考えていたのでしょうか・・・。

2007年8月20日月曜日

最近の金融市場・・・SL Capital Exchange(CapEx)、Allenvest Financial Bank

★SL Capital Exchange(CapEx)

Allenvest International Exchange(AVIX)は8月初旬にJT Financialに買収され、市場名をSL Capital Exchangeに変更して運営されることになりました。(8月7日のエントリ参照)

買収後、新経営陣は株式市場の透明化を図るため、いくつかの新方針を発表しました。


まず、IPOを計画している企業のCEOに、運転免許等の政府発行身分証明書のコピーの提出を義務付けました。

また、各企業には、月次決算報告書を毎月10日までに提出するように義務付けし、提出が遅れた場合には1日につき1,000リンデンドルの罰金、15日までに提出しなかった場合には株式取引の一時停止、30日までに提出しなかった場合には上場廃止および経営幹部の口座凍結などの厳しい制裁措置をとることを決めました。

8月16日には新しいウェッブサイトへの移行、およびインワールドのシステムの移行が完了しました。

ところで、この移行措置の内容なのですが、各投資家がAVIXの口座に保有していた株式はCapExに移行されましたが、現金は移行されず、現金はAllenvest Financial Bankの口座へと移されました。また、CapExの口座は、銀行であるJT Financialの口座と統合されました。したがって、CapExの口座の現金残高にはJT Financialの金利である日利0.15%が適用されることになりました。これは年利に換算すると72.8%にもなります。

Allenvest Financial Bankは、AVIXの元CEOであるInvestor Allenが経営する銀行ですが、大口の預金者である、セカンドライフのある銀行が定期預金を中途解約したため、資金不足に陥り、8月16日には預金引出し限度額を1,000リンデンドル/日まで引き下げました。

同銀行の発表によれば、現在の総預金残高は約1,200万リンデンドル。それに対し、総資産は約2,150万リンデンドルあるとのこと。2週間後には、引出し限度額を25万リンデンドルに戻すとしています。


★リンデンラボ社の警告

ところで、リンデンラボ社は、8月14日に、The Second Life Economyというタイトルの記事を公式ブログに掲示しました。そして、その最後の部分で、同社はセカンドライフ内の銀行を規制する意思はないことを明らかにし、そして、うますぎる話には気をつけるように、住民たちに警告を発しています。

もちろんこれは、最近起きたGinkoの破綻を踏まえた上での意思表明であり、住民間の争いごとにはノータッチという、従来からの同社の姿勢を再度明らかにしたものです。

セカンドライフ内の金融機関に対する規制についてはWIRED NEWSの翻訳記事に簡潔にまとめられています。


★株式市場のデータ

各株式市場の動向を知る上で、各市場の取引高の推移を把握することがひとつのポイントになりますが、残念ながら、現在データを入手できておりません。

WSEとAVIXには、データを提供してくれるようにメールでお願いしてみたのですが、WSEからは正式に断られ、AVIXからは返事をもらえませんでした。両市場とも、PRにはあまり力を入れてないのか、または、人手不足なのかもしれません。

なお、World Stock Exchange(WSE)に関しては、同社のサイトに取引高の推移を示したグラフがあります。(ただし、ブラウザがIEの場合、表示がきちんとされないことがあります。)

また、株価の推移については、World Stock Market Indexという総合指数の推移がsl QUATES.COMに掲載されています。

2007年8月14日火曜日

銀行倒産に備えるための保険・・・The Rock Insurance Co.

最近、Ginko Financialが実質的に破綻し、多くの預金者が損害を被りました。またこのことにより、セカンドライフの金融機関全般に対する人々の信頼度も低下したと言えるでしょう。

金融機関にお金を預けつつ、できればそれを安全に運用したいという人のために、預金保険を提供している保険会社がセカンドライフには存在します。

それが、The Rock Insurance Co.です。

保険の掛け方ですが、金融機関に預金を持っている預金者は、The Rock Insurance Co.からCertificateという証書を購入します。その購入代金が払い込み保険料になります。そして、万が一、預金先の金融機関が倒産した場合には、The Rock Insurance Co.が預金者に、被害額を保障してくれます。

ただし、預金残高の全額が保険の対象となるわけではありません。預け入れ先の金融機関に応じて、対象となる金額の最低と最高が決められています。
 
下の画像は、現在、The Rock Insurance Co.が保険の対象としている金融機関とその保険料率です。株式市場に預けているお金も保険の対象となります。(Allenvest International Exchangeは新株式市場への移行の最中のため、保険の引き受けが一時停止されています。)




例えば、上から2番目に掲載されているJT Financialの場合ですが、預金者は2,000リンデンドルから250,000リンデンドルの範囲で保険をつけられます。保険期間は30日間、保険料率は保険対象金額の1%です。

ちなみに、JT Financialの預金金利は、現在0.15%(日利)。これを30日に換算すると4.59%となります。

ところで、金融機関が倒産した場合、The Rock Insurance Co.はその金融機関を調査し、補償額を決定します。例えば、倒産した金融機関が預金残高の30%しか預金者に支払わない場合は、The Rock Insurance Co.が残りの70%を預金者に支払います。

先日破綻したGinkoの場合ですが、The Rock Insurance Co.はGinkoに財務情報の開示を求めたものの、それを得ることができず、損害の割合を確定することができませんでした。そのため、同社は保険契約者に対して、100%の補償額を支払うことにしました。

ところで、上の画像からわかるとおり、金融機関によって保険料率が異なります。The Rock Insurance Co.は各金融機関から独自に情報を入手し、それによって保険料率を決定しています。
 
The Rock Insurance Co.のCEOである Eliale Morigiによれば、今から3ヶ月前、同社がこのビジネスを開始したころは、各金融機関から情報を得ることができなかったそうです。しかし現在では、多数の金融機関が、インワールドとのリアルワールドの情報を提供してくれているとのことです。  

The Rock Insurance Co.の調査能力がどのくらいのものかはわかりません。けれども、セカンドライフの世界に、信用格付けの機能を有する企業が現れたことは、注目に値すると思います。

2007年8月9日木曜日

Ginko、ついに銀行業務を停止

Ginko Financialがとうとう銀行業務を停止しました。

同社の公式サイトは、預金者たちがログインできない状態になっており、代わりに8月8日22:20(EDT)付けで、長文のアナウンスメントが掲載されています。

それによれば、預金引き出しのリクエストが、約5,000万リンデンドル(約2,200万円)に達しており、現時点で、資産を低価格で処分して預金引出しに応じることは、Ginkoの長期的展望を危うくするとのこと、また、今後、預金者たちのパニックが治まって、Ginkoの業務が通常の状態に戻ることはもう見込めないとのことでした。

さらに、預金者たちの財産を守るためには思い切った方策が必要なこと、そして、その方策として、Ginkoは、現在の預金をすべて強制的にGinko Perpetual Bondに転換することにしたと述べています。

Ginko Perpetual Bondとは、償還期限のない債券です。

上記のアナウンスメントによれば、預金者たちには、預金1リンデンドルにつき、額面1リンデンドルのGinko Perpetual Bondが1枚割り当てられることになります。Ginko Perpetual Bondの金利は、3ヶ月ごとに額面の3%です。

Ginko Perpetual Bondは、現在、World Stock Exchange(WSE)で取引されています。時期は明確には示されていませんが、将来、Ginkoの預金者たちのために、自動的にWSEの口座が開設され、各預金者は、その口座を通じてGinko Perpetual Bondを売却することができるようになるそうです。

この原稿を書いている時点では、まだ私のWSEの口座には、Ginko Perpetual Bondは割り当てられていませんでした。

8月9日20:13現在のGinko Perpetual Bond(銘柄略称GPB)の取引価格は0.19リンデンドル。GPBは額面が1リンデンドルですから、もしも預金と引き換えにもらったGPBをこの価格で売却したら、預金額の81%の損失を被ることになります。

Ginkoの信用度はすでに低下していますから、そこが発行する債券の取引価格がこれから上昇するとは思えません。Ginko預金者に債券が割り当てられる頃には、GPBの市場価格は現在よりも低下していることが予想されます。

さて、Ginkoは、預金者から預かったお金を、無期限の借金に転換することによって、なんとか延命を図ろうとしています。このやり方については、預金者たちから非難の声が上がるだろうと思います。

ただ、このやり方を不法だとするような法律は存在しませんから、非難されるだけでおわってしまうことになるのかもしれません。

それにしても、このようなスキームを考えだしたのは、いったい誰なのでしょうか。

実は、Ginkoは上記アナウンスの2日前である8月6日に、WSEでGPBの債券分割を行っています。1口の債券を100口に分割しました。分割の理由は、1口の価格を引き下げることによって流動性を高めるとのことでしたが、今回の措置を念頭において、分割を実施したのだと思います。

ひょっとすると、Ginkoが消滅すると困る誰かが、Ginkoに知恵を貸しているのかもしれません。



2007年8月8日水曜日

Ginkoの最近の動き

Ginkoでは、いまだに資金ショートの状態が続いています。

最近まで、預金者一人当たりの1日の引出し限度額が5,000リンデンドルに制限されていたため、預金者の中には、知人に新しい口座を開いてもらい、そこに自分の口座からお金を送金し、知人の口座経由でお金を下ろすことによって限度額をかいくぐろうとした人もいたようです。

このような中、預金者間の公平を期すため、8月3日には、Ginkoは、預金引出しに順番制を取り入れました。

預金者は預金引出しの手続きをしたときに、予約番号を割り当てられます。そしてGinkoは資金があるときに、予約番号の若い順から、預金引き出しのリクエストに応じていくわけです。


私も少額ですがGinkoに預金がありましたので、昨日、引出しに行ってみました。最初に残高の確認をすると次のような表示がでました。


Ginko Financial ATM: Currently processing number 538 of 3511. (L$44,510,485)


引き出しのリクエストが全部で3,511件あり、現在538番目を処理中とのことのようです。

引出しの手続きをすると、私のリクエストは2,687番目との表示がでました。

ところで、538+2,687=3,225にしかなりませんので、上記のATMの表示は正確ではなさそうです。

なお、8月5日には、Ginkoは、1日の引出し限度額を100万リンデンドルに引き上げたほか、普通預金の金利を0.01%から0.1%まで引き上げました。

8月6日には、SECOND LIFE HERALDにGinko関係者のインタビュー記事が掲載されました。

その中で、GinkoのCEOであるNicholas Portocarreroは、Ginkoの債務が約2億リンデンドル(約8,860万円)あることを明らかにしています。また、GinkoのHinoserm Rebus(正確な役職名は不明)によれば、その時点での預金引出しのリクエストの未処理分が約3,000万リンデンドル(約1,330万円)あるとのことでした。

★Ginkoの行く末は?

財務諸表が公開されていないので、正確なところはわかりませんが、これまでの経緯からみて、Ginkoはおそらくは債務超過なのではないでしょうか。そして、預金の払い戻しができない状態なのですから、実質的に破綻していると思います。

ですが、セカンドライフの世界には、破産法がありませんから、「破産」にはなりません。つまり、Ginkoの経営陣がログインし、ATMとウェブサイトが稼動している限り、Ginkoは存続し続けることになります。


ただ、個人的には、現在のような状況が永遠に続くとは思えません。Ginkoを運営するためのインフラのコスト(シムの使用料、サーバの費用)は毎月発生しているはずですし、また、システムを運用するための人件費も発生しているはずです。

ある時点で、これらの費用が払えなくなり、まず、Ginkoのシステムが止まることが考えられます。そして、Ginko関係者がセカンドライフの世界にログインしなくなってしまうかもしれません。

あるいは、セカンドライフの悪いイメージが広がるのを防ぐために、リンデンラボ社が介入してくる可能性もあります。


Ginkoの公式サイトでは、「多数の人々がGinkoを支援してくれており、今回の問題を乗り切る希望を持っている」と述べられていますが、これからGinkoにお金を預けようとする人がいるとは、あまり思えません。

私の預金が払い戻される可能性は、0%に近いのではないでしょうか。

2007年8月7日火曜日

JT FinancialがAVIXを買収

前回のエントリーでは、7月30日にGinko FinancialAllenvest International Exchange(AVIX)を買収することを発表し、その直後、AVIXの親会社である、Allenvest Investment Capital(AIC)が、その買収契約を破棄したとことをお伝えしました。


★JT Financialsによる買収

そのわずか4日後の8月3日、今度はJT FinancialがAVIXを買収し、その経営権を握ったことを発表しました。

ソース:
THE SECONDLIFE NEWSPAPER FINANCE
JT Financial Acquires Control of AVIX

SLNN.COM
JT Financial buys out AVIX stock exchange

JT FinancialとAICの間で取り交わされた契約によれば、AVIXの発行済株式総数のうちの70%にあたる株式を、JT FinancialがAICから800万リンデンドル(約350万円)で買い取り、うち100万リンデンドルを即金で、残りの700万リンデンドルを1年以内にAICに支払うとのこと。

この買収後もAICはAVIXの15%の株式を保有することになりますが、AICそしてAVIXのCEOであったInvestor Allenは、AVIXのCEOの職を辞任しました。

Investor AllenがAVIXを手放した理由ですが、経済的理由およびAICの仕事に専念したいとのこと。AVIXに掲示された告知によれば、セカンドライフ内での仕事が彼の時間を圧迫しているにもかわらず、そこからは収入を得てはおらず、そのため、現実世界の彼の仕事と収入に支障をきたしているとのことでした。

しかし、わずか4日前に開かれた、GinkoによるAVIX買収を発表した集会では、Investor Allenは、今後もAVIXの経営に関わっていく意思を表明していました。それにもかかわらず、今回は、完全にAVIXから手を引く意向を示しています。つまり、経済的理由以上の何かが、株式市場に注いできた彼の情熱を奪ってしまったようです。

一方、JT Financial側は、以前から独自の株式市場を持つことを考えており、そのため今回の買収を進めたとのことです。

今回の買収により、AVIXは名称を変更し、新しい名称はSL Capital Exchangeとなりました。

8月4日には、新しい経営陣が発表になりました。PresidentはLindsay Druart。この人物は、今年5月に倒産したSecond Life Investment Bankを再建した、L&L Rentals and SalesのCEOです。

関連エントリー:
銀行倒産、そして再建・・・Second Life Investment Bank

なお、JT FinancialのCEOはArbitrage Wiseですが、この人物は経営陣の中には名前が入っていません。

8月3日には、この買収を発表するための集会が開かれました。
そのときのチャットログはこちら。

AVIX Buyout By JT Financials Q&A Transcript

集会の参加者からは、今回の買収を批判する声も上がりました。その一人が、AVIXの取締役であるIntlibber Brautiganです。この人物はBrautigan & Tuck Holdings (BNT)のCEOであり、Second Life Exchange Commision(SLEC)のディレクターも務めています。

Intlibber Brautiganは、今回の買収が取締役会に何の相談もなく行われたため、買収は無効だと主張。また、集会後、彼は、今回の買収の有効性に関して、株主による投票を呼びかける告知をAVIXに掲示しました。


セカンドライフの世界には、「会社法」というものは存在せず、したがって、株主の権利も、そして取締役の権利と義務も明確には定められていません。ですから、万が一
株主投票が実現したとしても、今回の買収をなかったことにするのは無理であろうと思います。

★JT Financial

JT Financialは銀行です。正確な設立時期は不明ですが、CEOであるArbitrage Wiseのブログによれば、今年の2月にはすでに営業を行っていたようです。
下が銀行の建物およびその内部の様子です。



私が本社を訪ねたときは、カスタマーサービスの人が2人おり、口座の開き方等を教えてくれました。

現在、普通預金の金利は日利0.15%(年率換算72.8%)、1日当たりの引き出し限度額は10万リンデンドルです。

なお、Arbitrage Wiseは、今年の6月にはセカンドライフのニュースサイトであるSL Reportsを260万リンデンドル(約115万円)で買収したほか、7月にはSL Market Liveという、ブティック風のショッピングサイトをオープンしています。

2007年8月3日金曜日

最近の金融市場の動き

最近、セカンドライフの金融界に関するニュースが相次いでいます。これまでの動きをまとめてお知らせします。

★World Stock Exchange(WSE)

WSEは7月27日に市場を再開しました。休止期間中にWSE3.0という新システムを導入したのですが、システムにバクがあり、市場再開後、取引がまともに行えない状態であったため、上場企業および投資家からは不満の声が上がりました。

そのときの混乱ぶりを伝える記事
The Secondlife Newspaper Finance
WSE 3.0 Debuts to Problems, Frustrated Customers

上場企業のいくつかは、新システムの不具合を非難するアナウンスメントを掲示しました。また、数社が、自社株式のWSEでの上場を廃止し、それらをInternational Stock Exchange(ISE)に移す旨のアナウンスメントを行いました。

ところが、WSEは、WSEを非難するようなアナウンスメントは短時間のうちに削除してしまいます。ですから、これらのアナウンスメントは現在見られません。しかし、そのうちのいくつかは、SL Reportのサイトで見ることができます。

その後、WSEはバグを修正するため、再び市場をクローズし、7月30日頃には市場を再開しました。

WSEはWSE3.0の開始を発表したアナウンスメントの中で、ハッキングの件についても言及しています。それによれば、321万5,916リンデンドル分の預金データが偽造されたとのこと。不正に引き出された資金のうち、一部は取り戻すことができたが、残りについては取り戻せるかどうか不明であるとのことでした。

なお、WSE3.0で注目すべき点としては、World Internet Currency(WICS)という仮想通貨システムとの統合です。WICSはWIC Exchange Pty Limitedが独自に発行した仮想通貨です。このWIC Exchange Pty Limitedという企業は、WSEの親会社であるHope Capitalと関係があるようですが、詳しいことは不明です。

すでにWICSの為替市場であるWIC Exchangeが開設されており、ここでは、WICSと米国ドルの交換、及びWICSとのリンデンドルとの交換が可能となっているようです。

ちなみに、現在の為替レートでは、1米国ドルで0.9615385WICドルが購入可能。また、1WICドルで261.997リンデンドルが購入可能です。

また、WSEのサイト上でもリンデンドルとWICドルとの交換が可能ですので、これで、セカンドライフに1度もログインしなくてもWSEで取引することが可能になったわけです。

このシステムに対する需要が生まれるかどうかは非常に疑問ですが、WICドルという、ひとつの仮想世界に依存しない通貨を作ったことは注目に値すると思います。


★Second Life Exchange Commission(SLEC)

セカンドライフの投資家および事業家たちが集まって、Second Life Exchange Commissionという団体を作っています。設立目的の正確なところは不明ですが、6月19日付けのAllen International Exchange(AVIX)アナウンスメントによれば、健全な投資環境を作るために、AVIXはSLECの策定した規則をAVIXに導入するとのことでした。ですから、証券市場の適正な運営を図るための組織、つまり、証券取引委員会的役割を担うことを目指しているものと思われます。

ところで、AVIXは同アナウンスメントの中で、International Stock Exchange(ISE)もSLECに参加したことを明らかにすると同時に、WSEにも参加を呼びかけています。しかし、現在までのところ、WSEはSLECに参加していません。

WSEのハッキングに関しては、SLECは独自の声明をだしています。その中でSLECは、一般投資家を守るためには、各株式市場から独立した、独自の規制の仕組みが必要であること、また、WSEは投資家からの信頼を取り戻すためにSLECの規制を導入することが必要であると述べています。

なお、SLECはまだ、その規制自体を明らかにしていません。おそらく策定中だと思われます。

周囲からの呼びかけにもかかわらず、WSEがSLECに加わることを拒んでいる理由は、2つ考えられます。

一つ目の理由は、現在のところ、WSEは最大の株式市場ですから、SLECに加わらなくても投資家を惹きつけておけると考えているのかもしれません。上場企業数および市場での取引総額から見ても、WSEと、2番目に大きい株式市場であるAVIXの間には、まだまだかなりの開きがあります。

そしてもうひとつの理由は、WSEの親会社であるHope Capital Ltdの株主構成にあるのではないかと思います。

Hope Capital Ltdの大株主、上位5名とその持ち株比率は現在、次のようになっています。

Nicholas Portocarrero 34.81%
Lukeconnell Vandeverre 21.97%
Third Party 15.12%
Alexis Enfield 6.10%
Shaun Altman 3.87%

Hope Capital LtdのCEOはLukeconnell Vandeverreですが、第1位の株主は彼ではなく、Ginko FinancialのCEOであるNicholas Portocarreroです。

ですから、SLECが策定しようとしている規制のしくみが、株主の権利を大幅に認めるようなものになった場合、Lukeconnell VandeverreはそのCEOとしての地位を失う可能性もあるわけです。


★Ginko Financial

前回Ginkoについてお伝えしたとき、1日あたりの引き出し限度額は10,000リンデンドルでしたが、現在は再び5,000リンデンドルまで引き下げられています。さらに、同社の公式サイトで、Ginkoは、必ずしも5,000リンデンドルの支払いを保証しているわけではなく、銀行に資金がないときには、引き出し可能額が0リンデンドルと表示されることもあるとしています。このことから、Ginkoがまだ資金繰りで苦しんでいることが窺えます。

さて、取り付け騒ぎのあと、Ginkoは皆を驚かせるような動きを見せました。

7月30日20:00(SLT)から集会が開かれ、その席上でGinko FinancialはAVIXを買収するつもりであることを発表しました。

ソース:The Secondlife Newspaper Finance
Angry Investors Scuttle AVIX Acquisition

Ginko Financialと、AVIXの親会社であるAllenvest Investment Capital(AIC)との間で結ばれた契約によれば、GinkoがAVIXの大多数の株式を取得し、AVIXの支配権を握ること、AICも引き続き多数の株式会社を保有し、AICのCEOであるInvetor AllenがAVIXの運営に引き続き関わること、GinkoはAVIXの株式と交換に、現金および非流動性資産(おそらく株式)をAICに渡すとのことでした。

また、Ginkoは自行の価値を1億2,500万リンデンドルであるとし、全株式のうちの4%にあたる株式をAVIXにおけるIPOで売却し、500万リンデンドルを調達する予定であること、またその500万リンデンドルを、AVIXの買収およびGinko本体の資金繰りに充てることをも明らかにしました。

これに対して、投資家たちからは、Ginkoの価値の算定基準が曖昧であること、またGinkoの経営内容が不透明であることを問題視する声が上がり、Ginkoに今までの経営内容を明らかにするように求めました。

ところが、GinkoのCEOであるNicholas Portocarreroが経営情報の開示をする意思はないことをその場で言明したため、投資家たちからは非難の声が相次ぎました。

そのときのチャットログは下記のサイトで見られます。
YOUR2NDPLACE
Chat Log With Investor Allen and Nicholas Portocarrero About IPO/Merger With AVIX

なお、この席上で、Ginko FinancialのCEO、Nicholas Portocarreroは初めて素性を明らかにしました。それによれば、本名はAndre Sanchez、ブラジルのサンパウロ在住です。また、Virtually Blindのインタビュー記事の中で、年齢が20代であることも明らかにしています。

さて、上記の集会にはAllenvest Investment Capital(AIC)のCEOであるInvestor Allenも参加し、GinkoによるAVIXの買収が、両者にとって非常にプラスになることを説明していました。しかし、この集会が終わってからわずか数十分後に、AVIXのサイトにアナウンスメントが掲示され、GinkoのIPOをロールバックにすること、およびGinkoによるAVIXの買収が中止されたことが発表されました。

透明性の確保を標榜し、SLECとも積極的に手を組んできたAVIXのInvestor Allenにとって、経営情報の開示を拒むGinkoの姿勢が容認できないものであったことは容易に想像がつきます。

しかし、Ginkoの保有するATM網と顧客ベースがいくら魅力的なものであったとは言え、今回の買収計画にのったこと自体が、非常に不思議でなりません。Investor Allenは、リアルライフでもプロの投資家ということですから。

この後、7月31日には、GinkoがAVIXに上場していたGinko Perpetual Bonds on AVIX (GPBA)をWSEに移すことを発表しました。

また、同日、Ginkoは普通預金の金利(日利)を0.13%から0.10%に引き下げるとともに、新たに定期預金の発売を行い、さらに、8月2日には、普通預金の金利を0.05%(年利換算、約20%)まで引き下げました。


8月3日15:50追記:Ginkoはさらに普通預金の金利の引き下げを行いました。現在の金利(日利)は0.01%、年利換算で、約3.7%です。