2007年5月3日木曜日

土地を巡る問題、その2・・・ランドボット(Landbot)

セカンドライフの土地に関する問題としては、先日のエントリーで紹介したLand extortionのほかに、もう一つ、大きく問題視されていることがあります。それはLandbotとかautomated land buyingといわれているものの存在です。


★ ランドボットとは何か?

ランドボットというのは、土地の売買を専門とするロボットです。割安な土地を見つけると、いち早く現地にテレポートし、その土地を購入します。そして、その土地に新しい売却価格を設定し、次の目標地点へと去っていきます。

土地を購入しようとするときは、人はまず、土地のサーチパネルを開き、条件を指定して、検索を行ないます。そして、サーバから返ってきた検索結果を見て、判断し、それからテレポートして現地にたどり着き、購入というプロセスに至ります。


ランドボットは、この検索から購入までのプロセスを自動的に、高速で行ないます。 そして購入した土地に、売却の設定までするのです。

また、ランドボットは、あらかじめ設定された条件に合う土地を見つけるのに検索を繰り返すのですが、それを5秒という間隔で、その土地が見つかるまで何回でも繰り返すのです。

そして見つけるや否や、直ちに現地にテレポート。ランドボットの処理スピードは、コンピュータの処理スピードですから、いくら人間がすばやく行動したところで、それににかなうはずはありません。

では、このようなランドボットのどこが、問題とされているのでしょうか?
ランドボットの問題は、大きく2つに分けられると思います。


★ ランドボットの使用が、ユーザーの間に不公平感をもたらしている

ランドボットの機能は上でご紹介しましたが、それではランドボットとは具体的にはどんなものでしょうか。

ランドボットとは、一言でいえば、特殊に改造されたクライアントソフトです。(注1)

今年の1月初めに、リンデンラボ社は、クライアントソフトのソースコードを、GNU General Public Licence Ver 2.0 (FLOSS例外条項付き)というライセンスの下に公開しました。(商用の場合は別のライセンスが適用されます。)それにより、誰でも自由にクライアントを改変することが正式に認められようになりました。

つまり、クライアントソフトを改造して、いろいろと便利な機能をつけてもよいことになったのです。ですから、土地を自動で検索してテレポートし、土地を自動で購入する機能を持ったアバターを使用しても、現在の利用規約には違反しないことになります。

しかし、ランドボットの数が増えてくれば、一般の人が割安な土地を購入するチャンスは少なくなります。不動産の売買をビジネスにしている人にとってみれば、死活問題です。

今年の1月末に、公式フォーラムにPrevent autmated land buying!というタイトルのスレッドが立てられました。ランドボットを複数使っているユーザーがおり、それにより、割安な土地を購入する機会が奪われているので、リンデンラボ社にランドボットの使用を禁止してもらうように働きかけようという趣旨のものでした。

それに対して、ランドボットを使用している当の本人が、そのスレッドに投稿を寄せました。彼の主張は、リンデンラボ社がクライアントのソースコードを公開したのは、クライアントソフトの技術的発展を狙ってのことであるから、ランドボットを作って使用することはルールに反しないし、倫理的にも悪くないというものでした。


★ ヒューマンエラーとシステムの不具合に乗じて利益を得ているランドボット使用者がいる

人間は誰でもミスを犯すものです。土地を売却する際に、うっかりして本来よりも安い価格に設定してしまうこともあるはずです。

その場合、その安い価格は、サーバのデータベースに直ちに反映されます。すると、その情報を入手したランドボットがその土地に現れ、売主がその間違った価格を訂正するよりも早く、その土地を購入し、新しい売却価格を設定してしまうのです。

ランドボット使用者のなかにも良心的な人はいるらしく、ミスをしたという事情を話せば土地を戻してくれる場合もあるそうです。

しかし、そうではないランドボットの使用者もいます。そして、何も知らない第三者が、そこに巻き込まれてしまうケースもあります。その実例を偶然耳にしましたので、ご紹介します。

ある男性が、メインランドで土地を購入しました。彼が買ったばかりのその土地を整地をしていると、見知らぬ二人がやってきて、誰からその土地を購入したのかを彼に尋ねた後、その土地は、もっと高い価格で売るはずのものだったから、その価格と彼が購入した値段との差額を欲しいと要求したのだそうです。

彼にしてみれば、まったく筋の通らない話です。その土地は、その二人とはまったくの別人から、相場の値段で購入したものだったからです。当然ながら、彼はその要求を拒否しました。最終的には、相手が感情的になり、汚い言葉を彼に浴びせたそうです。

その後、しばらく経ってから事情が判明しました。その二人は、何らかの原因で、意図していた価格よりも低い価格で、Landbaron Merlinというランドボットに土地を買われてしまったらしいのです。Landbaron Merlinは、購入した土地を相場の価格で売りに出し、それをたまたま見つけたその男性が購入したというわけです。

その男性は、二人からお金を要求されたとき、詐欺か何かだと思ったそうです。何の落ち度も無いのに言いがかりをつけられたような状況で、さぞかし嫌な気分になられたことと思います。

なお、このLandbaron Merlinというランドボットのことは、Second Life InsiderのUI bug costs Second Life user thousands?という記事でも取り上げられています。

その記事によれば、ある女性が、土地を売却するために設定をいじっていたところ、その設定を完了する前に、Landbaron Merlinに土地を安く買われてしまったそうです。

この女性の話が本当だとすれば、価格設定ミスなどの明らかなミスが無い場合でも、何かの不具合に乗じてランドボットが土地を安く買っていってしまうことがあるようです。

また、公式フォーラムで次のような話も目にしました。

ある人が、土地を二つに分割した後、片方だけ売り出すつもりで、その片方に値段をつけて売却の設定にしたところ、なぜか2つの区画がまたもとの一つの土地に戻ってしまい、そして一瞬のうちに、半区画分の値段になっている土地全体がランドボットに買われてしまったとのことです。

それに対して、別の投稿者から、サーバラグだと指摘する投稿もありました。 何のミスもしていないのに、サーバラグのせいでランドボットに土地を安く買われてしまうのだとしたら、本当に恐ろしいことです。

ランドボットに対するリンデンラボ社の対応ですが、1月30日の公式ブログで、同社はランドボットの使用が困難になるようプロセスを、売却の手続きに導入することを考えていることを明らかにしました。しかし、現在までのところ、そのようなプロセスは一切導入されていません。

ユーザーの間では、ランドボットの使用禁止をリンデンラボ社に求める動きも起こっており、4月に入ってからは、No To Land Bots!という署名サイトができています。

人のミスに乗じて利益を図るようなランドボットの使用の仕方は、絶対に許されないことだと思います。

しかし、ランドボットの使用を全面的に禁止することは、技術者たちの新技術の開発意欲を抑制することにつながりますので、長い目で見ると、SL全体にとっては、不利益になるのではないかと思います。

最後に、おもしろいスナップショットが撮れましたのでご紹介します。Landbaron Merlinが売りに出している土地の画像です。広さ880平方メートルの土地が8,254リンデンドルと割安な価格で売りに出されていたものです。


一辺がギザギザになっているほぼ三角形の薄茶色の土地が、売りに出されている土地です。(右端にある、低い看板が立っているあたりは、別の人の土地です。解像度の関係で境界線がはっきり写っておりません。)

その三角形のちょうど中央部あたりに、別の色の土地があるのが確認できると思いますが、この部分はLandbaron Merlinのものではありません。そしてその部分の上空には、大きな看板が立っているのがわかると思います。

つまり、ランドボットであるLandbaron Merlinは、土地単価だけを購入の判断基準にしていたらしく、生身の人間であれば絶対に買わないような、このような土地を購入してしまったようです。

狐と狸の化かし合いみたいなこの状況、将来はどうなるのでしょうか?

注1:セカンドライフを始める時にダウンロードしたソフトのことです。リンデンラボ社は、ビューアーという呼び方をしています。

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

プログラムがオープンになればなるほど、この手の問題は増加しそうですよね。

もっとも最近土地売買がつまらない(のでやってないけど)のが残念です。結構楽しかったのに。

sheila6225 Allen さんのコメント...

>プログラムがオープンになればなるほど、この手の問題は増加しそうですよね。

同感です。皆がランドボットまたはその他のボットを使い出して、そのためクエリーの量が増大して、リンデンラボ社のサーバに影響を与えるようになれば、リンデンラボ社は動くでしょうね。きっと。

未完成のビューアーを使って、シムに負荷をかける可能性があることなども、話題に上がってました。

匿名 さんのコメント...

なるほどね。余計重くなってしまう。

でも下手な対策をとられると不便かも。

ブログにも書いたけど、売ってる土地のサーチ画面で「prev」「next」をがしがし押して検索してたら、すぐブレーキがかかって数分間は使えませんとダイアログが。。。。

ボットじゃないっちゅーのw。

sheila6225 Allen さんのコメント...

ランドボットは5秒間隔でサーチを行なうそうです。

ガシガシ押した場合、「あなたはtoo quicklyにやったらから、ブロックしました」という表示が出ますので、5秒間隔というのは、ブロックされない最低の間隔に近い数字なのではないかと思います。

実際に試してみましたが、5秒間待ってから、nextなどのボタンを押すと、ブロックされないみたいです。